わたしのフェスタ・ド・インテリオール
違うんだってば!
心の中で叫んでいた。大好きな歌。フェスタ・ド・インテリオール。これもまた大好きな風船を手に持って歌いながら、「違う違う! わたしが歌いたいフェスタ・ド・インテリオールはこれじゃない! 赤い風船が似合うフェスタ・ド・インテリオールはこうじゃない!」と心の中で叫んでいた。
フェスタ・ド・インテリオール。マルシャのメドレーの定番の歌。わたしも、この歌を歌いながら踊るのが大好きだった。元気一杯に大声で歌うのが大好きだった。
でも、いつもどこかに違和感を感じていた。本当にこんな風に歌いたいの? こんなに大きな音が欲しいの? サンバは、フレヴォーは、マルシャは、大きな声で歌わなきゃいけないの?
わたしに歌えるサンバはないの?
わたしに歌える楽しいマルシャやフレヴォーはないの?
赤い風船を持って、のどかに歌うマルシャはないの?
優しい声で軽やかに歌うサンバはどこにあるの?
混乱を抱えたままサンバのセンセイのところに行ってみた。
「あのね。大好きなフェスタ・ド・インテリオールを、わたしらしく歌いたいんだけど、どうしたらいいの?」と聞いてみた。
「Moraes Moreira を聞いたこと、ある?」
「誰? そのひと・・・」
「フェスタ・ド・インテリオールを作った人」
何と言うことだろう。大好きなフェスタ・ド・インテリオールの作曲者の名前をわたしは知らなかった・・・
「いっしょに見てみようか。とっても楽しいから・・・」
そして、センセイと見たMoraes Moreira のDVD。
一曲目は"Canta Brasil"
ステージにはMoraes Morais ただひとり。ガル・コスタの熱唱で有名なこの歌を、そしてサンバのライブではパーカッション総動員で、「できる限り速く」という速度記号が譜面に書いてあるかのごとくに賑々しく歌われるこの歌を、彼はギター1本で、まるで懐かしいフォークソングでも歌うようにさりげなく歌う。かっこもつけず、叫びもせず、ただただ普通の声で歌う。
それでも、彼の歌うCanta Brasil は心地よいサンバ! ほっぺたが緩んでしまう、体が動いてしまうサンバ! のびのびと歌いながらも、ズンズンと前に進んでいくサンバ!
「カンタ・ブラジル・・・・こんな風に歌ってよかったの???」
「そう。みんな速く歌いたがるけどね。」
「こんな風に歌っていいのなら・・・歌っていたのに・・・・あきらめていたのに・・・カンタ・ブラジル・・・」
そして。
パーカッション、ドラム、ギター、ベース、トロンボーン、アコーディオン、バイオリンやチェロという編成でMoraes Moreira が歌うフェスタ・ド・インテリオール。
あなたは、どうしてわたしのイメージの中のフェスタ・ド・インテリオールを知ってるの? と聞きたくなるような歌だった。
フェスタ・ド・インテリオール。田舎のお祭り。夏の終わりのブラジルの6月。サン・ジョアンのお祭りの日に、広場に集まって、焚き火を燃やして、子供達はつぎはぎの田舎者の衣装を着て、大人達は甘くて強いお酒「ケンタオン」を飲み、みんなでフォホーを踊る・・・
フェスタ・ド・インテリオール。「夢の世界の戦争のお話。爆弾が破裂して飛び出したのは愛だった」と歌う。花火がドーンと上がって、ハート型の花が夜空に咲くような、のどかで、ユーモラスで、かわいい歌。
そのフェスタ・ド・インテリオールを、作曲者Moraes Moreira は、その通りにのびのび愉快に茶目っ気たっぷりにギターを弾いて歌う。大勢のバックのミュージシャンも、皆、優しい音で叩いている。弾いている。軽やかに楽しげ。決して大音響というわけではない。けれど、聞いていると、いっしょに焚き火の回りの輪に加わってフォホーを踊りたくなる。
なんて普通で、何て楽しいんだろう!
こんな風にやマルシャやフレヴォーをを歌えるのね。
こんな風に楽しいサンバを歌えるのね。
Moraes Moreira
ジョアン・ボスコのように奔放でもなく。
ジョイスやガル・コスタのようにかっこよすぎず。
ルイス・ゴンザーガのように泥臭くなく。
ベチ・カルバーリョやアルシオーネのような迫力の声でもなく。
ごくごく普通のギターと歌で自分の世界をつくってしまう。軽やかで、歯切れよくて、ユーモラスで。優しくて暖かく。そして、丁寧に作られた世界。
ずっと求めていた世界を見せてくれたと思った。漠然と「こうなりたい」と思いつつも、具体的な形が見えなかったイメージの、ひとつの答えを見せてくれたような気がした。
わたしは、わたしの声とギターで、自分の世界をつくろう。ほのぼのと暖かくて、時にはおかしくて、時には切なくて、そして、わたしのほっぺたも、聞いてくれる人のほっぺたも緩んでしまうような音楽をつくろう。
きっと歌えるにちがいない。
わたしのフェスタ・ド・インテリオール。
わたしのサンバ。
わたしの歌。
わたしの世界。
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