「涙そうそう」に本物の涙を添えて
来月のギターの発表会で、生徒全員が合奏する曲がある。なにしろ「全員」だから、わたしも覚えて弾かなければならない。正直なところあまり気が進まなかった。大して好きではない曲を暗譜して練習するのはとても億劫。
しぶしぶ練習を始めた。曲は「涙そうそう」。二十数人の生徒達は、それぞれのギター歴に応じて「メロディ」「伴奏」「ソロギター」のいずれかの譜面を渡されて練習することになっている。わたしは、いちばん手っ取り早く覚えられそうな伴奏の譜面をもらってきた。
ハ長調。最初のコードはC。そこからベースラインがC→B→A→G→F→Eと降りていく。抑え方はきわめて簡単なのだけれど、なかなかきれいな伴奏になっている。ギター教室の先生が作ってくれる楽譜は、左手の押さえ方が簡単で、しかも弾いてみるとなかなかきれいな音を選んであって、楽しい楽譜が多いのです。
さて。涙そうそう。何度か弾いているうちに、メロディを口ずさんでみたくなった。鼻歌でフムフム歌いながらアルペジオでコードを弾いているうちに、鼻歌ではなくてちゃんと歌いたくなってきた。楽譜には歌詞がついている。ついでに歌も覚えてしまおう。
何十回か、ギターを弾きながら歌っているうちに、なんとか歌とギターを覚えたようだ。そして、まだまだ何十回も歌いたい気分になってきた。
なんと言ったらいいだろう。コードを順番に弾きながら歌詞をメロディにのせて歌っていると、その行為自体で自らが慰められるような、そういう歌だった。そして、何十回目かの「涙そうそう」で、わたしは本当に涙を流してしまった。
来し方を振り返れば、あの時出合ったあの人、この人。友達として、先生として、先輩として出会った人たち。出会いの形はいろいろだったけれど、その人なりの優しさでわたしを支えてくれた人たち。そして、今はもう会えなくなってしまった人たち。この世を去ったひとも何人か。そういう人たちへの思いが、「涙そうそう」の言葉とメロディとギターのコードにオーバーラップして、わたしを包んでいく。
晴れ渡る日も雨の日も
浮かぶあの笑顔
思い出遠くあせても
面影さがして
よみがえる日は涙そうそう・・・
必ずしもドラマチックな場面を思い出すわけではない。あのとき、悲喜こもごもの日常をともにしていたあの人。この人。穏やかで平凡な日常。そのときは気がつかなかった彼、彼女の存在の暖かさが、何年もの時を経た今、よみがえる。
さみしくて
悲しくて
君へのおもい 涙そうそう
会いたいと思うときには、その人はもういない。そんな思いを今まで何度もかみ締めてきた。そしてきっとこれからお・・・
会いたくて
会いたくて
君へのおもい 涙そうそう
誰にも、忘れられない出会いと別れがある。
この歌が人々をひきつけるのは、出会いと別れの切なさを穏やかに歌うところにあるのだろう。
会いたくてももう会えない人々への思いを胸に、今宵、もう何十回か歌ってみよう。
涙そうそう。
| 固定リンク
コメント
KAZUさん、こんにちは。
涙そうそう、本当にいい曲ですね。ギターソロ、聞かせてください。わたしにはちょっとソロで弾くには難しい・・・・
またクラスタでお会いしましょうね!
投稿: ももこ | 2005.09.06 20:13
こんにちは。何度かクラスタでご一緒したことのある者です。覚えてるかな? ももこさんの唄も聞きに行きたいと思いつつ、なかなかその機会がなくて残念です。
決められた曲をなかなか練習する気になれないというのはよく分かります。僕は合奏はやっていませんが、先生から出された課題曲は大抵その瞬間にやる気を失います(笑)
ただ「涙そうそう」は元々大好きでした。ソロギターでも挑戦中(ただしキーはE)。
ボサ・ノヴァにも興味が出てきたこの頃…。またご一緒出来る日を楽しみに。
投稿: KAZU | 2005.09.06 13:59