« 楽しさは一流をめざしたい | トップページ | 弾けば弾くほど震えるギター »

2005.10.14

基本に裏打ちされた楽しさ

何気なくテレビをつけたら、バレエ教室の風景が画面に映った。

あれ? なんか、ヘン・・・あ、男の子ばっかりだ!

そうなのです。それは、"ボーイズクラス"という、男の子達を集めたバレエの集中レッスンの密着取材の番組でした。バレエ教室といえば、かわいい衣装を身につけた女の子達が思い浮かびます。この集中レッスンを受講する男の子達も、ふだんは地元のバレエ教室の「黒一点」。そんな、7歳から18歳までの90人のバレエ少年達が、広いスタジオでみっちり勉強する。

講師は現役バレエダンサーの首藤康之さん。彼自身、子供のころから女の子に囲まれてバレエを踊ってきた。そんな彼が後輩のバレエ少年達に、自分の持っている技術や感性をできる限り伝えようと全力投球で一週間のレッスンに取り組む。

90人のバレエ少年は初級,中級,上級の3クラスに分かれてレッスンを受ける。初級クラスは、まだバレエを始めて間もない小さい男の子が多い。踊る楽しさをまず体感することを目的に一週間のレッスンは始まった。首藤先生といっしょに広いスタジオを楽しく動く。表現する。

しかし、バレエは確固とした技術に裏打ちされたダンス。初級クラスも、レッスンの最初は、バーを使った基礎トレーニング。そこで、いかに美しく足を上げるか、体を動かすか。小さい男の子達相手の初級クラスではあるが、首藤先生は、基礎の動きの大切さを子供達に、あるときは言葉で、あるときは自分がやってみせることで伝えていく。

そう。首藤さんはどのクラスでも「基本の動き」を強調していた。「どんなに早く動けても、どんなに回数多く回れても、一つ一つの動作が行き届いていないと美しいダンスにならない。」と繰り返し言っている。そして、「いい例」と「悪い例」を目の前でやって見せる。

バレエの世界で男性ダンサーは欠かせない。鍛え抜かれた体と、磨かれた技術。ダイナミックな動き。そんなバレエダンサーを見て憧れをもったバレエ少年達は、現役一流ダンサーの首藤さんの、テクニックに裏打ちされたかっこよさを一週間、毎日目の前で見る。

レッスンの合間のインタビューでも、首藤さんは「基本と楽しさのバランスが大事」とコメントしていた。踊る楽しさはバレエダンサーの原点。だけれども、その「楽しさ」を形にするには、一つ一つの基本動作を研ぎ澄ませるほどに確実なものにしなければならない。でも、基本の動きを完璧にすればそれでバレエになるかというと、もちろんそうではない。基本の動きを前提に、「何か」を表現しなければならない。「楽しさと基本のバランス」。これは、バレエを習い始めたときから、そしておそらく首藤さん自身今でも感じているテーマなのだろう。

バレエ少年たちの道のりはまだまだ遠い。バレエ教室の「黒一点」たち。時には、バレエの楽しさを感じられないこともあるだろう。時には、基本の積み重ねに嫌気がさすこともあるだろう。もっと手っ取り早くかっこよさを手に入れたいと思う時期があるかもしれない。そんなとき、「一つ一つの基本動作がなければ、美しいバレエにはならない」と目の前で見せてくれた首藤さんの姿を、彼らは思い出すに違いない。

基本に裏打ちされた楽しさ。

「楽しさ至上主義」を標榜するわたしには、ちょっぴり耳の痛い番組でもありました。


|

« 楽しさは一流をめざしたい | トップページ | 弾けば弾くほど震えるギター »

コメント

基礎練習を楽しいと思って毎日続けられる人はあんまりいないんじゃないかなー。
やらなきゃいけないと思いつつ私もさぼりっぱなし・・・
でも基礎練習をしっかりやってる人はやっぱり上手いですよね。

投稿: 田中 | 2005.10.16 03:43

ペコちゃん、メッセージありがとう。「楽しくないピアノレッスン」にめげてしまうというのはよくあるお話。楽しく弾きたい!という意欲がまずあって、それから「じゃあ、どうしたらいいの?」となるのですよね。やっぱり、楽しさは、努力を積み重ねるうえでも原動力になると思います。

田中マスターへ。明日のフリーコンサートめがけて、これから数時間、技術を磨いてみます・・・ドキドキ。

投稿: ももこ | 2005.10.15 11:52

ももこさん、お誕生日おめでとうございます!
偶然ながら、今日14日は、板垣武志師匠の生誕の日でもあるのでした。
しかも、昨日13日はなんと私の誕生日でもあり、一昨日12日はうーさんの誕生日でもあったのでした・・・なんという偶然の一致でしょうか。

しかし、このめでたい日々にpekoは風邪をひいてしまいました・・・
今日のお誕生日ライブ、楽しんでください!

ところでバレエの話ですね、昔、この国がバブルで熱狂していた頃、pekoも大枚はたいてバレエの公演を見に行きました。モダン系が多かったですが、中にはクラッシックもありました。バレエのダンサーたちの強靭でしなやかな美しい動きは、見ていて惚れ惚れします。その頃からバレエを習うのがブームになりつつあったようですが、今は当時よりもさらにバレエを習う男の子たちが増えてきたようで、頼もしい限りです。

基本となる技術の習得は大事ですが、それを楽しんで覚えることはもっと大事じゃないかと思います。私の甥は、ピアノを習いたいといって、習い始めたのですが、どうやらそのときのピアノ教師と合わなかったらしく、1年足らずでイヤになってやめてしまいました。今はピアノの蓋を開けようともしません。せっかく自分から習いたいといって始めたのに、惜しいことをしたと思います。よい指導者にめぐり合うのも(子どもの場合、親が探すことになりますが)大事ですね。

投稿: peko | 2005.10.14 16:41

本論へのコメントですが、
世の中には、
「気持ちさえこもっていれば技術の無さなんて全く気にならない」
などと公言してはばからない人がいますが、私は全くそうは思いません。
気持ちを込めた表現力を豊かに確実に形にするために技術を磨くことが絶対に必要なのです。
ももこさんのギターの単音をはじいた音はすばらしく美しい音だと思います。
もっとも基本となる技術ですが、私にはあんなきれいな音は出せません。
まさに練習の賜物でしょう!

投稿: クラスタ田中です。 | 2005.10.14 11:30

あらら、田中マスター、お祝いありがとうございます。毎日の体操は若さの秘訣?? マスターにもオススメしますよー。

投稿: ももこ | 2005.10.14 11:28

お誕生日おめでとうございまーす。
ラグ体操で健康増進!

投稿: クラスタ田中です。 | 2005.10.14 11:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/84574/6389605

この記事へのトラックバック一覧です: 基本に裏打ちされた楽しさ:

« 楽しさは一流をめざしたい | トップページ | 弾けば弾くほど震えるギター »