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2005.10.21

恋に恋する歌、カリニョーゾ

「わたしの心は・・・」で始まり、「わたしの心は・・・」で終わる美しい歌、カリニョーゾ。この歌のギターを教わったのは、ギターを弾き始めて2年目のころだったろうか。

弘美ちゃんが、「わたしがいちばん好きな歌です」と言って、ライブで必ず歌うカリニョーゾ。ブラジルの第二の国家といわれる名曲カリニョーゾ。弘美ちゃんが歌うカリニョーゾは日本で聞ける最高のカリニョーゾではないかとわたしは思う。


何年も前のある日のこと。

「ねえねえ、カリニョーゾのギター、覚えて伴奏してよー」と弘美ちゃんが言い出した。彼女もわたしも、ギターを習い始めて2年目ごろだったろうか。彼女は、大好きな歌を歌いたい一心で、サンバのセンセイに頼み込んでカリニョーゾのギターを教わったものの、弾きながら歌うのはまだまだ大変そうだった。そのころ、いっしょに二人であちこちで歌っていた、その相方のわたしに「伴奏してよ」とお声がかかったのである。

きれいな歌です。ギターの伴奏も美しい。弾けるようになったら楽しいだろうな。わたしもサンバのセンセイに頼み込んで教えていただいた。

一通り弾き方を覚えたころに所用で松山に出かけることになった。当時は仕事が忙しく、ギターの練習にまとまった時間を割くことがなかなかできなかった。「松山に行けば、空いている時間にカリニョーゾの練習ができそうだ。そうだ、ギターを持っていこう!」 ハードケースに入れたギターを飛行機の隣の座席に座らせて、ギターと二人連れで松山へと旅立った。

予定の用件は一日目の夜までにすべて終了。翌日の午後、飛行機に乗るまでは自由の時間である。ホテルをチェックアウトすると、曇り空の少し肌寒い松山の街を、ギターを弾けそうな場所を求めてうろついた。そしてたどり着いた松山城近くの神社。閑散とした境内の石段に腰をおろすと、ギターを取り出して練習を始めてみる。

カリニョーゾのギター。次々と変わっていくコードは流れるように美しい響き。合間あいまに入る単音のメロディが片思いの切なさを物語る。センセイのように、カリーニョーゾ(愛情深く)のように弾けたらどんなに満たされることだろう・・・・

しかし、簡単なコードを押さえるのもおぼつかなかったわたしには、カリニョーゾのギターはあまりにも難しかった。石段に座るお尻がそろそろ痛くなって、薄ら寒い風に体がブルブルと震えるころ、ため息をついて立ち上がった。そろそろ飛行機の時間も気になる。喫茶店で暖かい珈琲を飲んで、松山の街を後にしたのでした。

それからしばらく経って、なんとかかんとか弾けるようになったカリニョーゾ。弘美ちゃんの伴奏で何度かライブで弾いたことがある。

「きょうのカリニョーゾのギターは何点でしょう?」
「そーだねーー、45点ってところでしょーか」
「あ、このあいだより5点上がりましたねー」

なんてオバカなやりとりを二人でしながら、あちこちで弾いたカリニョーゾ。


あれから何年も経って。弘美ちゃんは、自分のギターで、心を込めてすばらしいカリニョーゾを歌うようになり、わたしのギターの伴奏は必要なくなってしまった。

カリニョーゾ。

あなたに恋い焦がれるわたしの熱い熱い胸のうちをあなたが知ってくれていたならば、あなたはきっとそばにいてくれるだろうに・・・・

という切なくも熱烈なラブソング。ブラジル人なら老若男女誰でも知っている歌、カリニョーゾ。そして、誰かが歌いだすと必ずと言っていいほど大合唱になってしまう歌、カリニョーゾ。

わたしも歌ってみたいとずっと思っていた。弘美ちゃんの伴奏をしていたころよりは、ちょっとだけ上達したギターで歌ってみたいと思った。

でも・・・・

イントロを弾いて、歌の始まり、「メウ・コラサオン・・・」のアルペジオを弾き始めると、わたしの頭には弘美ちゃんの歌が流れてしまう。奥行きのあるよく響く声で、まっすぐに、暖かく歌う弘美ちゃんのカリニョーゾ。彼女がこの歌を歌うと、聞く人はみな心打たれてシンとなる。

ああ、わたしは、彼女のようには歌えない。誰だって、彼女のカリニョーゾの方がいいと思うに決まっている。わたしにはこの歌はうたえないのだろうか・・・・わたしのカリニョーゾはないのだろうか・・・


ある日。ギターを抱えたわたしは、何気なくカリニョーゾを歌ってみた。すると、なぜか、まぶたの内側に、昔むかし見たテレビドラマのワンシーンが映る。昭和の時代の木造の家の物干し場。境正章と浅田美代子が並んで座って歌っている。その挿入歌はたぶん、「赤い風船」・・・

恋に恋する女の子ごころを、普段着姿のアイドル浅田美代子が物干し場で歌う。

 ♪あの子はどこの子 こんな夕暮れ
 ♪しっかり握り締めた赤い風船よ
   ・・・
 ♪こんなとき誰かがほら
 ♪もうじきあの、あのひとが
 ♪来てくれる、きっとまた
 ♪小さな夢持って

そうだ。カリニョーゾは恋に恋する歌かもしれない。ブラジル人は、この熱烈な片思いのラブソングを大きな声で大合唱しながら、この歌のような熱烈な恋、ブラジル人にとっての理想の恋を夢見ているのではないかしら? 

恋に恋する歌。これなら、歌えるかもしれない。
そう、恋に恋する女の子になって歌ってみよう。

「わたしの心は・・・」で始まり「わたしの心は・・・」で終わる恋の歌、カリニョーゾ。

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コメント

ブラジルでも懐メロでしょうねえ。たしかにふだんはあまり聞かれないかもしれません。

いつだったか生協で買い物していたらBGMにカリニョーゾが流れてきてびっくりしたことがあったっけ・・・

投稿: ももこ | 2005.10.22 18:25

そういえば、この曲最近聞いていません。
いい曲ですよね。
メウ・コラソン。。。。

投稿: Sao Paulo | 2005.10.22 06:12

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