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2006.06.28

わたしは Amazing Grace を歌わない。

知人の日記をふらりと読みにいった。

「Amazing Grace のメロディが頭から離れない。」と書いてある。

ギター弾きの彼はもちろんギターを弾いてみる。けれど、ジャズ風のアレンジになじんでいるせいか、オリジナルのメロディをうろ覚えにしか知らないことに気がついた。

そんなお話だった。

ひと言、コメントを書いた。

「じゃ、今度お会いしたときに、「正統派無伴奏単音メロディのアメイジング・グレイスを弾いて差し上げますよ。これならMomokoにも弾けそうだ!」


本当に弾けるのかいな?

コメントを送信すると、傍らのギターを取り上げた。

最近、わたしはこういう風にしょっちゅうギターを抱いている。
ふと何かを思い出しては、手が自然にギターに伸びる。

Amazing Grace.

いい歌だけれど、とりたてて好きではなかった。これを歌えば感動の涙という筋書きが見え透いている。そんなシチュエーションで聞くことが多かったからだろうか。

Amazing Grace.

単音でメロディを弾いてみた。
一オクターブ、16小節に収まる単純なメロディを弾いてみた。

Amazing Grace

人差し指と中指で弦をはじく。
一音、一音に耳を澄ます。

祈りの音だと思った。
ギターが、祈りを音にしたいと
わたしの指を待っている。

Amazing Grace.

祈りは楽器の中にある。
ギターの声を
一音、一音に託した楽器の声を
そのまま響かせてやらねばならない。

指先と耳に精神を集中させて
単音のメロディを弾いてみる。

ごめんね。

今のわたしの指は
まだ、あなたの祈りを音にできない。

Amazing Grace.

何度かの試みの後、
今の自分の力のなさを思い知り、
そして、
わたしはギターと約束しました。

Amazing Grace.

わたしはこの歌は一生歌わない。

この歌は、
ギターの祈りの歌だから。
一つ、一つの音符にこめられた
ギターの祈りを
この指で響かせることができるように。

ギターといっしょに祈りながら
単音のメロディを弾こう。

いつの日か、
わたしの腕の中のギターの祈りが
空気を奮わせますように・・・

Amazing Grace.

わたしは、この歌はうたわない

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2006.06.27

少年時代

5月の日曜日。サンバ友達の弘美ちゃんと二人で、「江東区腕白相撲大会」というイベントに参加した。

会場は都立高校。ここに、江東区内の小学生が700人!とその家族が集まって、1年生から6年生まで、学年別、男女別(女の子だって相撲するんですよ~!)に相撲をするのです。

朝から午後3時ごろまで、体育館では熱戦が繰り広げられます。

そして、出番を待つ、あるいは、残念ながら予選で負けてしまって出番がなくなった子達は、ロビーや中庭に出てきます。

そこには一芸に秀でた(?)おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんが待ち構えていて、子供達を楽しませてくれる、という趣向になっているのです。

ジャグリング芸人のお兄さん。
津軽三味線弾きのお姉さんデュオ。
ベーゴマ遊びを教えてくれるおじさん。

そして・・・

サンバを歌う弘美おばさんとMomokoおばさん!

というわけです。

弘美ちゃんはギターにカヴァキーニョ。Momokoはタンタンを叩いて、サンバを歌ってみんなで盛り上がろう!

太鼓に興味津々の子供達にいいように遊ばれながら、二人はサンバをうたい、太鼓を叩き、子供にシェーカーをプレゼント・・・とサービス精神を発揮してガンバリました。

ひとしきり、みんなで太鼓を叩きっこしたところで、子供達が言い出しました。

「もっと、知ってる歌、うたってよー!」

やっぱりねえ。
子供も大人も、遠い異国の歌、サンバなんて面白くないわけだ・・・

でも、この子達が好きな歌っていったい何だろう? ふだん子供に縁がない弘美&Momokoには見当がつかない。

「じゃあ、どんな歌が好きなのよ?」と回りの子達に聞いてみた。

最初は。

 ドラえもん!
 アンパンマン!

それから。

 カントリーロード!

そして、女の子達が歌いだす。

 翼をください!
 ビリーヴ!

そして、ひとりの男の子が主張した。

 「少年時代」がいい!

え? 少年時代?
まさか・・・あの、少年時代?

にわかに信じられなかったわたしは、「ちょっと歌ってみてよ」と男の子を促した。

すると・・・彼はうたいだしたのです・・・・

 ♪なーつがすーぎ かぜあざみー
 ♪だれの おもかげに さまようー

それはまさしく井上陽水の「少年時代」。

さっきまでわたしの大事な太鼓をドンガン叩きまくっていた男の子が、「少年時代」を口ずさむ。

それは感動の不意打ちだった。

子供達が好きそうな歌はいくらでもありそうじゃないですか。

アニメソング。
CMソング。
ドラマの主題歌。
アイドルの流行の歌・・・・

でも、口のヘラナイ男の子が、「この歌がいい!」と主張したのは「少年時代」だったのです。

*****

5月の最後の日曜日。
とある公民館でギターサークルの発表会を聞きました。
公民館の体育室にはパイプ椅子が並べられ、正面には10名ほどのギターサークルのメンバーが緊張気味にギターを抱えて座っています。

平均年齢は60歳近くではなかろうか。ゆったりと、ゆっくりと、確かめるように、一生懸命ギターを弾く姿に、詰め掛けた家族や友人たちは聞き入っています。

1曲終わるとねぎらいの拍手。

そして、何曲目かに、パッヘルベルのカノンが聞こえてきました。

あら? プログラムにカノンはあったっけ? 予定外の曲なのかな?

不思議に思いながら聞き進むと、パッヘルベルのカノンは「少年時代」へのプレリュードだったのです。

高音部を担当する数人がメロディを美しく歌います。
コードを弾く数人がゆったりと伴奏します。

どの人も気持ちよさそうに、ちょっぴり誇らしげに弾いています。

サークルメンバーの歌心が見事に表われた演奏。

そして、最後にもう一度パッヘルベルのカノンに戻って、静かに終わる・・・

一呼吸おいて、客席から精一杯の拍手が沸き起こりました。それは、さっきまでの「ねぎらいの拍手」ではない。「名演奏」への拍手でした。

*****

井上陽水の「少年時代」。
子供のころの夏休みの心象風景を素直なメロディにのせて歌う。日本人の心に染みる名歌と言えるでしょう。

日本人の心に染みる詩とメロディ。世代を超えて受け継がれる「いい歌」を愛する心。

ずいぶんと古い歌のような懐かしさを感じるけれど、調べてみたら、発表は1992年。14年前の歌だった。

腕白相撲大会の小学生から、熟年ギターサークルのおじ様、おば様たちまでを歌わせた名曲。

井上陽水は、この一曲だけで、日本の音楽史上に名を残すに違いない。


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2006.06.25

コウカテキメン!

しばらく前から気に入って弾いている曲。

ブロウウェルの「シンプルエチュード」の6番。

不安定な響きのコードは徐々に激しさを増し、激情を吐き出すように昇り詰めたかと思うと、ふっと力が抜けて、天国に流れる小川のせせらぎのような音色になり、安らぎのうちに曲は閉じる。

そんな音のドラマが大好きで弾き続けている。


その日も、いつものように、気の向くままにシンプル・エチュードの6番を弾いて、自分の音に酔っていたわたし。

何度か弾いたところで、ふと、気がついた。

これって、エチュード。
つまり、練習曲なのよね。

アルペジオの練習曲。

ということは・・・

最近出番の多いメトロノームを取り出す。

最初は50から始めてみよう。
出だしがどうしても不ぞろいになるけれど、そこそこしっかり弾ける。

次は55。
これもしっかり弾けるみたい。

60、65,70,75。
メトロノームの目盛りを5ずつ上げて、それぞれの速さで何度も弾いてみる。

次は80。

不思議。
75まではけっこうしっかり弾けるのに、80になったとたんに右手の指がもつれる。

ああ、これが今のわたしの右手の限界なんだ。

メトロノームのカチカチにあわせてシンプル・エチュードを弾いているうちに、あっというまに2時間が経っていた。

そして。

エチュードの効能を思い知る。
指の動きを効率的にトレーニングできるのです。
弾きたい弦を、弾きたい指で、弾きたいタイミングで、弾きたい強さで弾く練習。
指の運動神経を高める練習を集中的に出来るのです。

ブロウウェルのシンプル・エチュードの6番。
大好きな曲は何十回弾いても飽きることがない。
このエチュードを、メトロノームといっしょに弾き続けたら、わたしの指はもう少し、もう少し、言うことをきくようになるかしら・・・

きょうも、始まりは四分音符=50。
ブロウウェルのシンプル・エチュードの6番で、わたしのギターの一日は始まります。

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2006.06.19

ABCの歌じゃないんだってば

先週の金曜日。とある小さなお店のパーティにお呼ばれして、サンバ仲間3人で賑々しくサンバを歌ってまいりました。

演奏の合間にメンバーの自己紹介。

「こんばんは。Momokoです。きょうはタンタンという、この大きな太鼓を担当しています。
ふだんはギターを弾いていろんな歌を歌っています。」

ここで止めときゃいいものを、ついつい口が滑ってしまいまして・・・

「弾き語りしているときは、間違えようが止まろうが、その場を何とか愉快に乗り切る自信があるんですけどね。
実はあさって、ギター独奏のイベントに参加するんです。ギター独奏の時だけは、緊張で頭が真っ白になるんです。ああ、考えただけでもドキドキします。」

すると客席から一声。

「じゃあ、あさってのリハーサル、いってみよー!」

ええ?? 
今、ここで、弾くの~~?

あれよ、あれよという間にギターを抱えて座らせられちゃいました。

急速に高まる緊張感。でもせっかくの練習の機会。皆さんにお付き合いいただこう。

「では、練習させていただきます。
曲は、"きらきら星"です。」

右手はこわばる。
左手は引きつる。
呼吸は乱れる。
ひざは震える。
ひざの上のギターもカタカタ震えてる~~~

そんな状態で、エイヤ!と弾き始めました・・・

♪ド ド ソ ソ ラ ラ ソー

やっとこさ、ここまでたどり着いたところで、客席からの一声。

「それ、ABCの歌じゃないの~?」

このひと言に、かろうじてかき集めた度胸も勇気も崩れ去ってしまいました。

そうなんです。
わたしが、エッチラオッチラ、しかも震えながら爪弾く

♪ド ド ソ ソ ラ ラ ソー

は、英語を覚えたての子供が歌う舌ッ足らずのABCの歌そのまんま・・・

でもね。

でもね。

この曲を弾くときのわたしは、モーツァルトを弾いている気分なのです。
かわいらしく、優雅で、透明なモーツァルトの曲を弾いているつもりなのです。クラシックの名曲を演奏しているという自負があるのです。

ABCの歌じゃないんだもん・・・・

とても悲しく、とても切なく、とても悔しく、そしてヤケになって、

♪エービーシーデーイーエフージー!

と歌い始めてしまう自分がまた哀しい・・・

いつの日か、震えないでギターの曲が弾ける日が来たら、その時には誰の耳にも「きらきら星」に聞こえるギター独奏をしてみたいものだ。

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