« 満面のスマイル | トップページ | ひとときのの快感 »

2006.08.01

この感触を待っていたのね

5月の末にクラシックギターを買った。たまたま訪れた楽器屋さんで、抱えた瞬間に、ずっと前からわたしのギターだったみたいにしっくりと体になじむそのギターを買った。

ほとんど一目ぼれで買ったギター。だが、いざ自分の部屋で弾いてみると、「ぼこぼこ」と重たくこもった音しか出てこない。

おかしいなあ。
お店ではあんなに弾き心地がよかったのに・・・
梅雨の湿気のせいかしら?

ちょっとした海外旅行に行けそうなお値段のギター。一目ぼれしたはずのギターが「ぼこぼこ」としか鳴ってくれないなんて悲しすぎる。

ふてくされたように、めんどくさそうに「ぼこぼこ」と音を出すギター。30分も経たないうちに弾いてるわたしは嫌気がさしてくる。

ああ、嫌だ。こんな音!

「ぼこぼこ」としか言わないギターなんかもうたくさん!

***

せっかくの新しいギターをケースにしまい、いつものエレガットをひざに抱える。

平成11年1月28日に購入したエレガット。アンプにつながなくても生音で楽しげにシャンシャンと歌いだす。たまに沈んだ音の日があるけれど、そんなときは静かな曲を弾いてあげると、そのうちに機嫌を直して、また愉快に歌いだす。

天気のいい日も悪い日も、ケースに入れて背中に背負って、あっちのお店、こっちの公園といっしょに歌い歩いた仲間。幼なじみのようなこのギターは、「たのしいのが一番大事!」というわたしの性分をよくわかっていて、明るい音を出してくれる。

好きな歌を次から次に弾いては歌う。右手の指に当たる弦の感触が、このごろますます気持ちよくなってきた。右手の指が気持ちいいと、ギターも気持ちいい音がするのよねえ・・・

右手に当たる弦の感触・・・・


あ。


幼なじみを置いて、ハードケースから新しいギターを取り出して抱えてみる。

右手の指が弦に当たる感触。
指をスパッと振り切って
弦に当たる感触。
力を入れて弾くのではなくて、
太鼓を叩くように、
スパッと指を振り切って弦を叩く。
そのときに、すっきりと歯切れのよい音が出る。

これは、幼なじみのギターを弾きながら最近気がついたこと。音量や歯切れのよさは、指の力を抜いて振り切る動作が関係するらしい。そして、力を抜いて振り切るためには、指の筋力が必要なのではないかしら?

ギター教室の先生が「ギターを弾いていないときに指のストレッチとトレーニングをするといい」と教えてくれたのは、こういうことだったのか・・・

*****

新しいギターでサンバのバッキングをゆっくり目に刻んでみる。

右手の指を振り切るように、
力を抜いて
弦を叩くように
そして直後にふっと力を抜いて
指を元に位置に戻す。

意識すればするほど「力を抜く」のは難しくなる。
厚みのある音色に神経がとらわれるのか、指使いが緩慢になる。
スパッと振り切るはずの指が、弦にまとわりついて「ねち」っと弦を押している。

そうじゃなくて!
幼なじみのギターを弾くときのように、
指をスパッと振り切ったら・・・

きっと

きっと


ほら!


ほんの一瞬。
シャキ!っと歯切れのいいコードが鳴った。
それは、幼なじみのギターのような陽気な音とは違う、しっかりと重みのある音。

新しいギターは、この指の感触を待っていたに違いない。
「ちゃんと弾いてくれれば、あなたの気持ちにこたえますよ」と言いたいのかもしれない。

新しいギターは、指のタッチに敏感に反応する。

このことに気づいた瞬間から、わたしは新しいギターを本気で弾くようになった。

耳を済ませて。
指先と音色に神経を集中させて。

|

« 満面のスマイル | トップページ | ひとときのの快感 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/84574/11173993

この記事へのトラックバック一覧です: この感触を待っていたのね:

« 満面のスマイル | トップページ | ひとときのの快感 »