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2006.08.19

た~~っぷり!!!

ひと月ほど前のこと、落語好きの母を誘って出かけた「ファミリー演芸会」という催し物で浪曲を聴く機会があった。

浪曲師というよりも、三味線を自在に操るエンタテイナーと言うほうがピッタリのその浪曲師は、「浪曲の楽しみ方」を面白おかしく解説してくれる。

中でも「かけ声講座」に客席は大笑い。

浪曲師が舞台に登場したら、

  待ってました!

そして、歯切れのよい三味線のイントロがひとしきりジャ、ジャ、ジャンっと鳴ったところで、

 た~~っぷり!!!

というのが、浪曲を知っているお客のかけ声だそうな。

 た~~っぷり!!

「時間など気にしないで、好きなだけやってちょうだい」という気持ちを込めて、

  た~~っぷり!!

とかけ声を飛ばすのだそうな。

  た~~っぷり!!

なんて気持ちのいいかけ声だこと! こんなかけ声を投げかけられた浪曲師は、さぞかし張り切って一節も二節もサービスしてウナるに違いない。

***

あいも変わらず毎日のように練習するバッハのインヴェンションの1番。

少し指が自由に動くようになってきた。そうだ。ためしにメトロノームに合わせて弾いてみよう。

そんなことを思いついた日から、インヴェンションの苦悩が始まってしまった。

メトロノームを40に合わせて弾いてみる。

かなりゆっくり。
指は十分追いついていける速さ。弾くこと自体には苦労はないはず・・・

だけれども・・・

まったくといっていいほどメトロノームに合わない。十六分音符が連なるフレーズで、指がトントントンと先走る。傍らで我関せずという風情で「カチ、カチ」鳴り続けるメトロノーム・・・

おかしいなあ。ゆっくり弾けばいいだけなのに、どうして合わせられないのだろう?

1分間に四分音符40個。それをさらに四等分して十六分音符を弾けばいい。込み入ったテクニックも何も関係ない。単純な話だ。

だけれども・・・・合わない。

何度か試みたところで、ふと思い出した。

  
  た~~っぷり!!


浪曲師へのかけ声。「あんたの名調子をたっぷり聞かせておくれ」というあのかけ声。それは、ただ、「たくさん聞かせてくれ」というだけではなくて、浪曲の、というか邦楽特有の喉づかい、声づかい、節回しを指しているのではないだろうか。浪曲の魅力は、まさに「たっぷり」と「隅から隅まで」歌いきるところにあるのだから。


  た~~っぷり!!


そうだ。

四分音符を機械的に四等分しようとするだけでは、体にしっくりこないのではないかしら?

目を閉じて、頭の中ににインヴェンションの楽譜を置く。そして、十六分音符の上に大きくスラーの記号を書き入れる。そのスラーの記号のように、大きく弧を描くイメージでメロディを歌ってみる。音符と音符の間の時間と空間を感じながら弾いてみる。筆で大きな円を描くようなイメージで・・・
隅から隅まで歌いきるように。


  た~~っぷり!!


少しずつ、メトロノームのカチカチに乗っかって弾けるようになってきた。大きな円周のコースを滑りながら十六分音符ごとに目印を落としていくようなイメージを、少しずつ、少しずつ、体が覚えていく。


  た~~っぷり!!


きょうも、自分で自分にかけ声をかけてから弾き始めるインヴェンションの1番。からだの内側から四分音符=40のインヴェンションが弾けるまで、た~~っぷり!!練習しましょう。

***

それにしてもバッハは偉大。簡単なのに、何千回弾いても飽きることがない名曲。

2声のインヴェンションの1番。

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