最近、ひそかに追っかけているお兄さん(おじさん?)がいる。
りびけん。
だいぶ前に、荻窪アルカフェに遊びにいったら、この不思議なお兄さん(おじさん?)がウクレレ弾き語りをしていて、ウクレレも上手いけど、歌いっぷりのよさがちょっと気に入った。
アルカフェは、ウクレレが壁にたくさんぶら下がっている店なのだが、りびけんさんは、歌い(弾き)終わると、壁にかかっているウクレレをみんなに配って、突然ウクレレ教室を始めた。
おかげで、「バラが咲いた」のコードを教えてもらえて、その後わたしのカヴァキーニョ(ウクレレの従兄弟みたいなブラジルの楽器)弾き語りの数少ないレパーーリーリーに加わった。
なんだか、愉快なおじさんだ。いや、お兄さんかな。
それっきり。りびけんさんのことはすっかり忘れていた。
一月ほど前だったか。ひょんなハズミでりびけんさんのブログを読んだら、これが面白い。その日、その日の出来事などなどをずばずばずばっと書きなぐる。読んですっきりするブログである。
そして、りびけんさんはウクレレ弾き語り以外にアカペラコーラスをやっていることを知り、池袋のお店に聞きに行った。
類は友を呼ぶ。歌いっぷりといい、かっこつけない(かっこつけてるのだとしたら、ごめんなさい。ほめてますから)、少々危なっかしいハーモニーを補って余りある愉快なアカペラコーラス。すっかりご機嫌になったわたしは、ついつい自分も歌いたくなり、前半のステージを聞いたところで帰ってきてしまった。
池袋駅から高架下の歩道を大きな声でサンバを歌いながら歩いて帰ったのである。
そのりびけんさんが、新宿のライブハウスの弾きがたりデーに急きょ出演が決まったという。
その日は四谷で友人たちと食事をしていた。彼女達と別れたのが8時ごろ。りびけんさんの出番は確か最後だった。今から歌舞伎町に向かえばちょうどいい時間だ。
歌舞伎町の店に着くと、何番目かの出演者がオリジナルを弾き語っていた。その次は、ちょっとお笑い系の入った弾き語りのお兄ちゃん。
わたしは非常に行儀の悪いお客であった。なにしろりびけんさん以外は興味がない。弾き語りお兄ちゃんの声がガンガン響く中、ソファに座って居眠りしていた。
そして、りびけんさんグループ登場。
名づけて三馬鹿トリオ。
類は友を呼ぶ。
名は体を現す。
すばらしくお馬鹿でご機嫌なライブ。ウクレレはシャキッと鳴り、パーカッションは小気味よい。そしてりびけんさんのすかっとする歌いっぷり。わたしは勝手に立ち上がって、歌って踊って手拍子して、キーホルダーについているブラジル土産のミニガンザを振って、愉快さを体一杯満喫させていただいた。
昔、名曲喫茶というお店があった。大きなスピーカーからクラシック音楽がかかり、人々は黙々とクラシック音楽を聴いて過ごす。
ある名曲喫茶には、レコードに合わせて指揮棒を振る名物おじいちゃんがいたという伝説を聞いたことがある。
昨夜のわたし。ステージ上のトリオの思惑も、行儀よく聞いてるほかのお客の迷惑もなんのその、ひとりで勝手に盛り上がって、ライブが終わると挨拶もせずにさっさと帰る。
そんなわたしは、はたからみれば名曲喫茶の指揮棒おじいさんのようだったかもしれない。完全に自分の世界に浸っている変なおばさん。
今のわたしは濃い音楽、濃いパーフォーマンスが欲しい。客席で心置きなく盛り上がれるような、ガツンと楽しませてくれるライブが欲しい。
そういう気分にジャストフィットなライブを聞けると最高に満足できる。朝、目が覚めたときに、「今日はとんかつだ!」とひらめいた日に、その日の予定をやりくりして、首尾よく最高に美味いトンカツにたどりついた喜びに通じる充実感である。
そうなんだ。わたしにとってライブは快感なんだと思う。
その日の気分、心境、体調にジャストフィットなライブを聞きたいという欲求は、食欲にかなり近い生理的な欲求なのだと思う。