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2009.11.22

Alvorada~夜明け~

サンバの歌詞にはmorro(モーホ)という言葉がよく出てきます。ポルトガル語で「丘」を意味するmorroですが、サンバでmorroと歌われるとき、それは単なる地形としての丘ではありません。リオデジャネイロの
morroは貧しい人々の粗末な家がびっしりと建ち並ぶところ。サンバはそうした地域で息づいてきた庶民の音楽です。
暴力と犯罪の温床と言われるmorro。そんなmorroの暗部を描いたブラジル映画“CITY OF GOD”の一場面。夜のmorro。どこかの家のラジオから、サンバの名曲、Alvorada(夜明け)が流れてきます。

あの丘にも夜明けが訪れる
すばらしい夜明けのとき
涙も悲しみもない
夜明けのこのとき
万物は微笑む
昇る朝日の中で
世界は鮮やかな色を取り戻す
夜明けのとき

あなたはわたしの夜明け
生きるすべを見失ったわたしの行く手を
明るく照らしてくれる
独りさまようわたしの人生に
彩りを取り戻してくれる
あなたは
わたしの人生の夜明け

夜明け前。出口の見えない闇の世界。その闇のmorroを朝日が照らす。日が昇るにつれて真っ暗なmorroが少しずつ色彩を取り戻していく。朝日は闇に光と彩りをもたらす希望の光だと言えます。
Alvorada~夜明け。世界に、人生に豊かな彩りを与えてくれる夜明け。この歌を口ずさむとき、リオの人々はそれぞれが抱える闇と、その闇に色彩を与えてくれる夜明けの光を心に描いているのだと思います。

サンバと出会って十数年。飽きずに歌い続けてこれたのは何故だろう?と考えたとき、この歌を思い出しました。
そうだ。サンバは私にとっても人生の夜明けだったのだ。
独りさまよっていた私の日々に彩りを与えてくれた希望の光。それがサンバだったのだ。
薄暗がりの中で独りで小さな円を描いて歩き回っていた私に、起伏に富んだ地面を踏みしめて歩けるように行く手を照らしてくれたのだ。

光がもたらすのは美しい色だけではありません。濁った色や暗い色も現れます。濁った色や暗い色もひっくるめたものが鮮やかな色彩の世界です。薄暗がりでもじもじしていた私が、鮮やかな色彩の、起伏に富んだ世界を「けっこう面白い」と感じられるようになったのは、サンバという夜明けが私に訪れたからに違いありません。

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