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2010.02.25

ライブハウス

日曜日の午前10時。携帯のメール着信音が鳴った。

「今年最初の迷惑メールです」

発信者は"所長"さん。
昨年出会ったシンガー・ソングライターさんである。

「今年最初の迷惑メールです」という件名のライブ告知のメール。
ライブに対する熱意と、知り合いに告知メールを送る照れくささと申し訳なさと、そして何よりも所長さんのお人柄が、この件名からにじみ出る。
思わずクスンと笑ってしまった。

「迷惑メール」を開くと、"K"でのライブがあると言う。

"K"・・・

あのライブハウスで所長さんの歌を聴くのは何かのご縁かもしれないな。

メールをいただいてから二週間後、私は一人で"K"への階段を下りていった。

・・・・・・・

"K"というライブハウスに出会ったのは、ギター弾き語りを始めて2年か3年経ったある日のこと、2002年前後だったと思う。

偶然このライブハウスのホームページに行き当たり、トップページのキャッチコピーにビックリしたのだった。


  「ノルマ5枚で
  ライブができる!」


ノルマ?
ノルマって何?


全く意味がわからなかった。

・・・・・

30代後半でサンバに出会って、浅草サンバカーニバルで太鼓を叩いて、サンバチームの仲間と商店街などのイベントで演奏し、40歳で歌とギターを習い始めた。

弾き語りのデビューはギターを習って2ヵ月後の区民センター祭りのステージ。その後も先生のライブに飛び入りさせてもらったり、レストランやらビヤガーデンやら居酒屋やら喫茶店やらお祭りやら・・・で歌わせてもらった。

つまり、それまで私はライブハウスという所に行った事もなければ、ましてそこで歌ったことなどなかった。

当然ライブハウスのシステムも知らなかった。

・・・・・

「ノルマ5枚でライブができる!」

このキャッチコピーの意味を理解すべく、"K"の出演規定を熟読した。

この店で歌うためには、歌う人が1000円のチケットを規定の枚数だけ売らなければならない。もし規定枚数のチケットが売れなければその差額は出演者が店に払う。

そして、この店の「1000円のチケット5枚」という規定は、他のライブハウスより良心的な規定枚数ということらしい・・・


演奏するためにお金を払う!
演奏者にチケット販売のノルマが課せられる!


「歌いに行くなら料理が美味しいお店がいいよねえ」と、のん気に歌い暮らしていた私には考えられない事態である。

出演者にノルマを課すライブハウスとはいったいどんなところなのだろう?
ノルマを課される出演者とはどんな人たちなんだろう?

私は"K"のライブを聞きに行ってみることにした。

・・・・・

狭い階段を下り、"K"のドアを押すと、「誰を聞きにきましたか?」といきなり聞かれて面食らった。「いえ、別に誰というわけではないのですけど・・・・」

そうか。「ダレソレを聞きにきた」と答えればそのダレソレさんのチケットが1枚売れたことになったわけか・・・ということに気がついたのは席についてからのこと。当てずっぽうに「1番最初の人」とでも答えてあげればよかったなあ、と後悔した。

薄暗い店内には簡易な椅子が何十個か並ぶ。その向こうがステージ。
ドリンクを片手に椅子に座るとやがてライブが始まった。

ステージには30分ごとに次々にミュージシャンが登場する。なんだか予告編を聴かされているような気分になってくる。

そしてどの出演者もお約束のように口にする言葉。

「早いもので最後の曲になりました」

本当はもっともっと歌いたいんじゃないの? 音響照明完備のステージで30分歌うことに「ノルマ5枚」の価値があるのかしら? 

ライブが終わって狭い階段を上って深呼吸しながら思った・・・「ノルマ5枚のライブハウス」に私の居場所はなさそうだ・・・

これが、弾き語り歴2,3年の私の赤裸々なライブハウス"K"初体験の記憶でる。

・・・・・・

所長さんは3番目に登場した。

1曲歌いきった後に自己紹介。実生活でも本物の「所長」さんである所長さんは、「部下に『今度ライブをやるんだけど』と言っても『いつ?どこで?』と聞いてくれる部下は一人もいないんです・・・」と笑いをとりながら話をつなぐ。

さだまさしを思わせる歌とギター。けれど、どの歌からも所長さんならではの生活観、人生観が聞こえてくる。

そして、どの歌もきっちり創って、きっちり歌う。

とっても楽しいライブだった。

最後の曲の後に深々と頭を下げる所長さん。
その姿に、所長さんのお人柄がにじみでる。


4番目、最後の出演者のポップなコーラスを最後まで聴いて、所長さんに手を振って、"K"の階段を上った私は、通りに出るとハアっと息を吐いた。

満足のため息。

7年か8年ぶりの"K"のライブは最初から最後までとっても楽しかった!

・・・・・

帰りの電車の中。
今日のライブに胸の中で改めて拍手を送る。


4組のミュージシャンに拍手。
きっちり準備して、きっちり聞かせてくれてありがとう!


"K"というライブハウスに拍手。
程よい音と照明。長すぎないプログラム。
出演者と聞き手を大事にしてくれて、ありがとう。


いいライブハウスって寄席のようなものかもしれない。
何人もの芸人さんが次々高座に上がって芸をきっちり披露する。お客は時間をかけて楽しむ。
少なくとも今宵の私はそういうゆったりした心持で4組のライブを楽しんだ。


聞き手たちに拍手。
出演者への暖かな眼差しは客席をを居心地のいい空気で満たしてくれた。
ありがとう。


二度目の"K"のライブを楽しめた私に拍手。
この7年か8年の間に、音楽を受け入れる心の間口がだいぶ広がったようだ。


そして。

二度目の"K"に誘ってくれた所長さん、ありがとう!

・・・・・

数日が経った。

こうして"K"のライブを振り返りながら、自分に問うてみる。

私はライブハウスに出演したいだろうか?


私はどこでどんな風に歌いたいのだろう?


いまだに答えがみつからないのでありました。


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コメント

バンドは人数が多いからノルマもきついんですよね~
20~30枚は当たり前。

ま、辛いものはあるけれど、慣れました(笑)
だからライブをやるときは
メンバーみんな金銭的にも楽なときに
やりたいということになります。

で、もっと頻繁にライブに出たいけれど、
そうもいかないんですよね~
(スケジュール調整とかいろいろ理由はありますが…)

何だかこのコメント、愚痴っぽいな(^_^;)
それでも音楽ってめちゃ楽しいです。

投稿: ぽんた | 2010.02.25 06:43

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