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2013.01.14

Dime...私に教えて...

高校に入ったころだったでしょうか。
購読していた雑誌にこんな投稿を見つけました。


 「わたしはペルー人の学生です。
  日本語を勉強しています。
  日本語で文通しましょう」


ペルー? 
ペルーってどこだっけ? 
ああ、南アメリカだ。
えーと、ペルーでは何語を話すのかなあ? スペイン語かな。
スペイン語、わかんないけど、この人は日本語で文通したいって言ってる。
お手紙出してみようっと。

かくして日本語での文通が始まりました。
彼は働きながら勉強する大学生。航空便用の薄い便箋に、一生懸命日本語の手紙を書いてくれました。

私もスペイン語がちょっとできたらいいのにな、と思い、NHKテレビのスペイン語講座を見始めたのは高校2年生の春からだったと思います。

英会話番組はカラー放送になっていたけれど、当時の日本ではまだまだマイナー言語だったスペイン語は白黒放送。それでも毎回楽しみに見続けました。
会話や文法の解説も新鮮で興味深かったのですが、いちばん楽しみだったのは「今月の歌」のコーナー。
スタジオで演奏してくれるのはマリキータ&ジローという日本人のラテン音楽デュオでした。
女性ボーカルのマリキータさんと男性ギタリストのジローさんが、スペインやラテンアメリカのポピュラーソングを歌ってくれるのが楽しみで、テキストに載っている楽譜と歌詞を見て一生懸命覚えて、テレビの前で歌いました。

高校3年の秋には、「スタジオで一緒に歌いませんか?」という番組の呼びかけにハガキで応募して、10人ほどの視聴者と一緒にNHKのスタジオでマリキータ&ジローさんと、ラテンアメリカの子守歌、Duerme Negritoを歌いました。高校時代の懐かしい思い出。

・・・・・

年月は流れ、40歳になったころ、ブラジルの音楽、サンバの虜になった私は、ラテン音楽のライブハウスに通い始めます。
そして、その店のライブスケジュールを見てびっくり! マリキータ&ジローさんが出演していらっしゃるではありませんか!

ドキドキ、わくわくしながらお二人のライブを聞きに行きました。

二十数年ぶりの再会です。

マラカスを手に、大らかにのびやかに、そして丁寧に歌うマリキータさん。
マリキータさんの傍らにすっくと立って、クールで熱いラテンギターを鳴らすジローさん。
音楽もお人柄も暖かなお二人がご夫婦だったことをこの時初めて知りました。

HNKテレビのスペイン語講座を見ていました、とお話しすると、「最近は歌っていないのだけれど」と言いながらもDuerme Negritoを歌ってくれました。

休憩時間になると、私は思い切ってジローさんに話しかけました。


 あのぉ・・・
 Duerme Negritoのギターのコードを教えていただけませんか?


私が差し出したノートにジローさんはさらさらとコード譜を書きこむと、

 「サンバをやっているのならサンバで弾けばいいですよ。好きなように弾きなさい」

と言ってノートを返してくれました。

その店でお二人のライブを最後に聞いたのはいつごろだったでしょうか。

マリキータさんのシルエットが小さく見えるのは気のせいだと思いたかった。

「声が出なくてごめんなさいね」とおっしゃりながら歌い続けるマリキータさんの歌が切なかった。

マリキータさんの訃報を目にしたのはそれからしばらく後のことでした。

・・・・・

昨夜、荻窪アルカフェさんのイベントで、マリキータ&ジローさんに教えていただいた歌を二つ歌いました。

ベネズエラとコロンビアの国境の村で歌い継がれていた子守歌、Duerme Negrito.

それから、Feelingというタイトルで世界的にヒットした曲、Dime.


 Dime…私に教えて…
 あなたを失ったこの苦しさを
 どうしたら忘れることができるのか
 Dime…私に教えて…


サンバに出会うよりずっと前に、情感豊かなラテンポップスの数々を教えてくれたマリキータ&ジローさんを思い出しながら、なかなか上手にならないギターをかき鳴らして歌ったのでした。


・・・・・

その後、大阪の大学に留学してきたペルー人のペンフレンドとは、結局一度も会うことはありませんでした。

当時の私には、大阪はペルーと同じぐらい遠かった・・・

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