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2014.04.08

そのままでいいんだよ

どうしてそんなことになったのかは全く覚えていないのだけれど、高校3年の文化祭で、ビートルズの歌詞の日本語訳を模造紙に書いて展示するということをやった。
ビートルズに特に関心がなかった私は、割り当てられた歌~~たしか、Yesterdayだったと思う~~を適当に訳して書いた。
面白くもなんともなかった。

文化祭当日。ビートルズの歌詞の和訳を壁に貼っただけの教室が注目を集めるはずもなく、手持無沙汰を紛らわすのに、私は壁に貼られた歌詞を、何の興味も感慨も起こらないまま、端から順々に読んでいった。

知っている歌も知らない歌も、とりたてて興味を引かれることもなく漫然と壁伝いに読み進んでいた私の眼が、一枚の模造紙の前で引っかかった。


何、これ?


「聖母マリアは言った・・・
 放っておきなさい・・・」


何、これ?

聖母マリアは「放っておきなさい」なんて言わないわよ!
当時から"なんちゃってクリスチャン"だった私は引っかかった。

英語の歌詞を見ると、

Let it be….

とある。聖母マリアが「放っておきなさい」なんて言わないとは思ったけれど、じゃあ、Let it be.とはどういう意味なのか? 見当もつかない。

そして、文化祭が終わって壁の模造紙を剥がすころには、この歌詞への引っかかりもすっかり忘れてしまった。

♪♪♪♪♪

「ブラジルの歌が好き
 日本の歌が好き
 英語の歌もちょっと好き」

ギター弾き語りを初めて数年経ったころのMomokoの名刺にはこう書いてあった。
喫茶店やレストランで歌わせていただく機会には、サンバやボサノヴァだけでなく、みなさんの耳になじみのある曲を歌うのが楽しいと思うようになっていた。
不動の人気のビートルズの歌も何かうたえないかしら・・・

図書館でビートルズのCDを借りて聞いていた私は、この曲に何十年かぶりに引っかかりを感じた。


Let It Be


今回の引っかかりは、歌詞ではなくピアノだった。
前奏のピアノ。中間で聞こえてくるオルガン。
まるで讃美歌のようだ。

そして、Mother Mary…と何度も繰り返される。

この歌はいったい何を言っているのだろう?

インターネットが手軽に使える時代。
検索するとヒントが出てきた。

ポール・マッカートニーの母親の名前はメアリーだったという解説を見たとき、Let it beの謎が解けたと思った。

♪♪♪♪♪

Let It Be (ももこ訳)

僕が悩みの中に身を置く時、
Mother Maryがそばに来て、
知恵の言葉を言ってくれるんだ。
「そのままでいいんだよ」

人生の暗闇の中にいる時に
Mother Maryは僕に寄りそって
知恵の言葉を言ってくれるんだ。
「そのままでいいんだよ」

そのままでいい。
そのままでいい。

知恵の言葉をささやこう
「そのままでいい」

心に傷を負った者たちが
お互いを認め合う時、
そこに答えがあるはず。
「そのままでいいんだよ」

散り散りになることもあるだろう。
でも、再会の望みはあるんだ。
きっと答えがみつかるはず、だから
そのままでいいんだよ。

そのままでいい。
そのままでいい。
知恵の言葉をささやこう。

夜の空が曇る時でも
一筋の光が僕に降り注ぐ。
そして、音楽が聞こえてきて、
はっと我に返った僕に、
Mother Maryは寄り添って
知恵の言葉を言ってくれた。
「そのままでいいんだよ」

そのままでいい。
そのままでいい。
知恵の言葉をささやこう。

そのままでいい。
そのままでいい。
きっと答えが見つかるはず。

そのままでいい。
そのままでいい。
悲しみはなくなるはず、だから

そのままでいいんだよ。

♪♪♪♪♪

これはポールの祈りの歌なのだと思った。
ある夜、夢の中で聞いた母Maryの言葉。

「そのままでいいんだよ」
 きっと答えが見つかるから」

「そのままでいいんだよ」
 悲しみはなくなるから」

音楽と人生の深い悩みの中にあったポールは、今、自分が経験している辛い状況の先には必ず光が差し込むという啓示を受けたのだろう。
彼にその啓示をもたらしたのは夢に現れた彼の母Maryだった。
ポールは、母Maryから受け取った希望のしるしを普遍化したかったのではないか?
だから、聖母マリアとも受け取れるMother Maryという言葉を選び、讃美歌風のアレンジを採用した。

苦しい状況にあっても、自分を信じて全力を尽くせば、その先にはきっと答えがある。
自分自身に、ビートルズのメンバーに、そして、彼らの歌を聞く世界中の人々に向けて、ポールは彼の個人的な夢の話を、希望の祈りを込めた曲として発信したかったのではないだろうか?

♪♪♪♪♪

この歌をなんとかかんとかギターを弾いて歌っている今の私。

高校の文化祭の教室の壁に貼られた歌詞の前で、聖母マリアが「放っておきなさい」なんて言うわけないじゃん!」とケチをつけていた三十数年前の私に、

「37年後のあなたは、この歌に祈りを込めてギターで弾き語っているんだよ」

と教えてやりたい。

あの時の私のずっと先に、今の私がいるということを。

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