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2015.02.15

さよなら、タンタン

火曜日の夜だった。
2階の部屋でギターを抱えて、好きな歌をつれづれに弾き語る。
何曲目かに大好きなサンバを歌いだしていた。

Mestre Sala Do Amor~愛のメストレ・サラ
恋人への未練を断ち切るためにサンバカーニヴァルの晴れ舞台に臨む男の歌。

 俺はメストレ・サラ
 この扇を大きく広げれば
 沿道の観衆の熱い視線を浴びる
 俺を泣かせてきたこの苦しみを
 今日こそ、遠くへ追いやるんだ
 それが俺がカーニヴァルに出る
 ほんとうの意味なのさ

2拍子のサンバの2泊目を叩くスルド(大太鼓)の重低音をイメージして
何度も何度も歌った。
泣きながら歌った。
泣き声で歌が歌にならなくなるまで。

ああ、私はこれが欲しかったんだ。
このサンバ。
このリズム。
このうねり。
このおおらかさ。
この切なさと優しさと逞しさ。

私が求めるサンバは、日本ではもう聞けないだろう。
ブラジルでもめったに聞けないかもしれない。

でも、私の記憶と体の中には、
私が求めるサンバがある。
再現せねば!
自分の力で、自分の歌とギターで再現せねば!
誰のためでもない。
私が生きていくために。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の夜に顔を出したボサノヴァライブ&セッションで久しぶりに会った友人が
「タンタンを叩いて歌いたいのよねえ」と言った。

タンタンはブラジルの太鼓。
膝に抱えて手のひらで叩くと
ブラジル音楽に欠かせない重低音が
ズーンと響く。
室内でサンバやボサノヴァを演奏する時に欠かせない太鼓。

「タンタンを叩きながら歌いたいのよね」と彼女が言った時、
私のタンタンを彼女に叩いてもらおう、と思った。

ギターの次に好きな楽器はタンタン。
最初に手に入れたタンタンは、長さ1メートルほどと大きかった。
膝に載せて叩いてサンバを歌いだすと止まらなくなる。
ズーンと体に響く低音と、その低音が作るうねりの快感がたまらない。

二つ目のタンタンは、ピンク色の小ぶりの太鼓。
あちらこちらに持ち歩いては叩いて歌った。
20150214tantan2

かつて友と二人でサンバを歌っていたころは
彼女はギター、私はタンタンを叩いていたけれど、

20150214tantan3
今は一人でギター弾き語り。
もう、タンタンを叩くことはないだろう。

それならば、「タンタンを叩いて歌いたい」という彼女に
私のタンタンを託してみよう。
これから私はギターと歌で自分が欲しいサンバを再現するのだから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タンタンの受け渡しはバレンタインデーの夜になった。
「東京タワーを見たい」という彼女のリクエストに応えて二人で展望台へ。、
日没直前の富士山を見つけてはしゃぎ、
夜景に重ねて映し出される映像ショーを堪能し、
マザー牧場カフェのソフトクリームの美味しさに彼女をうならせ、
フードコートでカレーライスを食べながら、
彼女の最近の音楽活動の話をいろいろ聞く。

すっかり暗くなった空に浮かぶタワーの
ロマンチックなイルミネーションを
何度も何度も振り返り眺めながら
浜松町駅まで歩く。
「ウルトラマンスタンプラリーのスタンプを押していく」という彼女に付き合って
反対側の改札口までさらに歩く。

そのあいだもずっと私はタンタンを入れたバッグを提げていた。
少しでも長く持っていたくて・・・

お目当てのウルトラマンのスタンプを押すと、いよいよお別れ。
ピンクのタンタンが入ったバッグを彼女に渡す。

「ありがとう。また叩く時があったらいつでも言ってね」と彼女は言うと、改札口へ入っていった。
その後ろ姿を見ながらそっとつぶやく。

さようなら、私のタンタン。
彼女と一緒に、彼女のリズムを鳴らしてね。
私は、ギターと歌で、私が欲しいサンバをやってみる。

さようなら、タンタン。
達者でね!


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