お出かけ発作を知らせるメロディ
玄関マットを新しくした。
しゃれっ気のない見栄えのマットだが、
これがなかなかの優れもの。
深夜に突然外に飛び出そうとする認知症の母が
玄関の手前のガラス戸を開けようと
ガラス戸の手前に敷いたこのマットの上に乗ると、
二階の自室で眠る私の枕元の受信機から
音楽が流れるという仕掛けのマット。
徘徊感知システム付きマットというわけだ。
時々、昼夜の感覚が狂う母は
深夜に突然目を覚ますと、
「デイサービスの迎えが来ないから歩いて行かなきゃ!」と
猛烈な勢いで飛び出していく。
時間の感覚がマヒした状態であるから、
外が真っ暗だろうが、寒かろうが、お構いなし。
混乱状態の時に外に飛び出したら、
典型的な徘徊状態になってしまう。
そんな深夜の「お出かけ発作」が何度か続いた。
たまたま娘が熟睡していなかった時だったので、
玄関へ続くガラス戸をガラガラと開ける音を聞きつけて
慌てて階下へ駆け下りて、
母をベッドに連れ戻したのだが、
娘が眠っている間に母の「お出かけ発作」が起こったらお手上げだ。
というわけで、「徘徊感知マット」を試しに使ってみることに。
介護用品業者の営業マンが、
マット、電源アダプター兼送信機、
そして2階に置く受信機をセットし終えると、
「では、マットを踏んでみてください」
おそるおそる白いマットの上に乗ってみると、
受信機から明るいメロディが流れる。
ハイホー、ハイホー♪のメロディ。
白雪姫だったかしらん・・・
「警告音は10種類の中から選べますが、
どれにしましょうか?」
営業マンのお兄さんに
取扱い説明書の音色リストを読み上げながら
一つ一つ鳴らしてもらう。
「1番が今のハイホー、ハイホーですね。
2番は青春の輝き。カーペンターズです」
「あら、素敵」
「3番はカノン」
「ハッペルベルのカノンですね」
「4番は瞳がほほえむから」
「どんなのでしたっけ?」
「今井美樹ですよ。」
「ああ、これね!」
「5番はHERE COMES THE SUN」
「これは?」
「ビートルズですよ」
「ああ、この曲ね、知ってる!」
「6番は未来予想図Ⅱ」
「えーと・・・?」
「ドリカムですよ。」
「ああ、聞けばわかるわ!」
お兄さんとこんなやりとりをしながら
順番にメロディを鳴らすうちに、
母の徘徊の心配で頭がいっぱいだった私は
ゆるゆると気持ちがほぐれていくのを感じた。
2番の「青春の輝き」を選んでセット。
営業マンが帰った後、
ひとりでマットを踏んでみた。
2階の部屋から「青春の輝き」のメロディが
優しいオルゴール音に包まれて聞こえてくる。
そうだ。
「徘徊予防マット」という名前のマットだけれど、
一日中、つけっぱなしにしよう。
朝、母がデイサービスに行く時にこのマットを踏んでも
夕方、デイサービスから帰って来た時にマットを踏んでも、
日曜日にヴェローチェに二人で出かける時にマットを踏んでも、
「青春の輝き」の優しい音色が聞こえるのは素敵じゃない?
そして、深夜の「お出かけ発作」のママがマットを踏んだ時も
枕元の受信機が奏でる「青春の輝き」で目を覚ませば、
深夜の非常事態にも、落ち着いて向き合えるような気がする。
もちろん、深夜の「「青春の輝き」を聞かずに済む夜が続いてくれれば
いちばん安心なのだけれど・・・



















