2015.03.31

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 エピローグ

ボサノヴァのスタンダード曲、コルコヴァードのギターを弾いたライブの翌日。
一緒に演奏した友人が書いた日記を読んだ。

「ももことボサノバ考」と題したその日記。
私のことを「ボサンバのももこさん」と呼び、
日本のボサノバ人気の源流を分析し、
自身とボサノバとの距離が近くなったと嬉しげに語る
その日記に胸が熱くなった。

サンバに恋して20年。

何度目かの挫折に苦しんだこの冬、
「ボサノバ、たのしいじゃないですか!」と
ボサノヴァのボールを投げてよこして、
私を思わず本気にさせてしまったのは、
ブラジル音楽の輪の外で出会った友人だった。

そして。

コルコヴァードのギターに悪戦苦闘しながら、
ある日のセンセーの姿を思い出していた。
その日、サンバのセンセーのレッスンに行くと、
センセーが一人でひたすらギターを弾いていた。

「何を弾いているんですか?」と聞くと
「また新しい世界に入ってるんだよ」と言って、
センセーはギターを弾き続ける。
喜びに至る道の孤独を垣間見た思いがした。

サンバは人生そのもの。
喜びがあれば、挫折もある。
人々と共感するものであり、孤独に追及するものである。

歓喜と挫折の間で、
共感と孤独の間で、
激しく、深く揺れながら
見果てぬ夢を追い求めよう。

私の歌とギターで
私のサンバができる日を夢見て。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

サンバの名曲"O que é o que é"を自分のスタイルで歌い、語るZé Ramalho

 何のために生きるのか?
 その答えを見つけるために 
 僕たちは生きるんだ。歌うんだ。
 答えを知らないこと、
 答えを求め続けることは
 恥ずかしいことじゃない!


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見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その9

サンバに恋して20年目の2015年3月。

ひょんなことから、ボサノヴァと向き合うことになる。
友人たちと急きょ結成した3人ユニットで、
ボサノヴァのスタンダード曲、コルコヴァードを取り上げることになった。

いつも一人で弾き語りをしている私は、
どんな歌をうたう時でも、
ネットで見つけたコード譜を参考にしながら、
自分が弾ける簡単なコード、好きな響きのコードに変えて、
構成も、歌い方も、自分風にしてしまう。

しかし、キーボードとギターで歌の伴奏を担当する
今回はそうはいかない。
オーソドックスな形でギターを弾くことになる。

これが私には大変だった。
譜面と首っ引きでコードを覚え、繰り返しギターを練習。

20年前、「ボサノヴァ、いいですねえ」と言ってくださる相手に
「私はサンバが好きなんです!」と食ってかかっていた私が、
ボサノヴァの譜面を見ながらギターを練習している。

そして、それが決して嫌ではなく、
むしろ、楽しくもやりがいのある課題だった。

ギターを弾きながらそっと口ずさむコルコヴァード。
弾きながら、歌いながら、ゆったりと揺れるからだ。
ああ、なんて幸せなんだろう。

そうか・・・

ボサノヴァのルーツはサンバだった。
大きく、深く揺れるサンバに対して、
小舟のように穏やかに揺れるボサノヴァ。
どちらも、心と体が揺れながら奏でる音楽なんだ。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

  コルコヴァード

  部屋の片隅にはギター
  この愛に 歌がまたひとつ
  愛する人を幸せにするために
  想いは静けさの中に
  夢は時の流れの中に
  窓の外にはコルコヴァードの丘
  何て、きれいなんだろう!

  夢見るのはこういう日々
  この命が尽きるまで
  あなたのそばにいたい
  あなたに出会うまで
  何もかもが信じられなくて
  涙にくれていた私
  そんな私に
  愛することの喜びを教えてくれたのは
  あなた・・・
    
  (ももこ訳)


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

あなた・・・
それはサンバ。
音楽を愛する喜びを教えてくれたサンバ。
この命が尽きるまで、
サンバの揺らぎの中で、歌い続けたい。

サンバに恋して20年目の3月の夜に
コルコヴァードをひとり弾き語りながら
ボサノヴァの優しい揺らぎに
身を任せる幸せを知ったのでした。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

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2015.03.29

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その8

その日、サンバ仲間の友人と二人で
ちびっこ相撲大会というイベントのアトラクションコーナーで歌っていた。

大きな太鼓とギターを鳴らして歌う私たちに
子供たちが興味津々で寄ってきた。

サンバ好きのおばさん二人。
得意になって歌うのは、もちろんサンバ。
ポルトガル語で歌いまくる。

何曲か歌ったところで、
ひとりの男の子がこう言った。

「何か、知ってる歌、やってよ!」

あまりにもストレートな男の子の「クレーム」に
私たちは言葉に詰まった。

あなたたちが知ってる歌って・・・
たとえば、どんな歌?

男の子は歌いだした。


  なーつがすーぎー かぜあざみー
  だれの あこがれに さまようー
  あーおぞらーに のこされたー
  わたしの こころは なつもようー


アニメのテーマソングやアイドルの人気曲を予想していた私は
男の子の口ずさむ歌に虚を突かれた。

いい歌がたくさんあるではないか。
いい歌をたくさん知っているではないか。

男の子の一言で、私の歌の記憶の扉が開いた。
童謡、唱歌から流行歌、ポップスやジャズやラテン、日本の民謡から長唄まで。
幼いころから歌ってきた様々な歌が自分の中にあふれてくる。

せっかくギターを弾くようになったのだから、
こういう歌を歌ってみよう。
サンバのセンセーに教わったギターの弾き方を出発点に、
自分なりの弾き方で、自分なりの歌い方で、歌ってみよう。

40代半ばのおばさんと、10歳の男の子が
井上陽水の「少年時代」に共感しあえたように、
「いい歌だよね~!」と人々と共感できる歌をうたいたいものだ。

そこから、私の新たな歌うたいの歩みが始まったのでした。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

ギター一本でこれだけのバンドを率いるMoraes Moreira.
優しくて、ユーモラスで、それでいてぐんぐん引っ張っていくスピード感。
私の憧れのミュージシャンの一人。

”Preta Pretinha" by Moraes Moreira

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2015.03.26

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その7

サンバにすっかりはまってしまい、
歌う楽しさにハマってしまい、
歌うためにギターを鳴らし始め、
サンバを聞きあさり、
気に入った歌を次々覚えては歌い、
ポルトガル語を少々かじってみたりするうちに・・・

あちこちで歌うようになったら。
これがまた、楽しくて、やめられない。
出番があると聞けばどこへでも出かけていった。

ビルの屋上のビアガーデンやら、
自然食レストランやら喫茶店やら。
カレーパーティやら、桃のお花見の余興やら、桜まつりの演芸コーナーやら、
結婚式の披露宴やら、オープン直前のキッザニアの内覧会やら、

どこへ行っても、歌うのはサンバ。

楽しかった!
歌っている時の私は自由!
歌っている時の私がほんとうの私!

しかし、無邪気なお祭り騒ぎも長くは続かなかった。

自分の歌とギターに失望してしまったのである。

私がやってるのはサンバじゃない。
センセーのようなサンバじゃない。
周りの人々の体を揺さぶるような、最後には踊らせるような魅力がない。

サンバにハマって、サンバを弾き語り始めたころ、

「ボサノヴァ、いいですねえ」と声をかけてくださる相手に

  これはサンバです!

と食ってかかっていた失礼な私だったが、
自分の演奏の録音を冷静に聞くと、
ボサノヴァにさえなっていない、ただの下手くそな歌とギターでしかなかった。

どうしたら、サンバができるんだろう?
体を揺らすリズム、スピード感とおおらかさを併せ持つグルーヴを
私の歌とギターで再現する術があるのだろうか。

「これはサンバです!」

なんていう野暮な但し書きを付けなくても、
みんなが愉快になって、体を揺らして、踊り出すような
そんなおおらかなサンバを弾き語れるようになるのだろうか・・・

サンバ、だーい好き!などと言いながら、
私はサンバが歌えない。
私はサンバが弾けない。

このジレンマに、いまだに悩み続ける日々である。


もう、やめちまおう!

何度思ったかわからない。

それでも歌い続けようと思いとどまらせてくれたのは、小学生の男の子の一言だった。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

人生という綱渡りのショーを続けなければいけないと歌う名曲。
この曲を知らない方々に、こころを揺らして聞いていただけるような
少なくとも私の心が揺さぶられるような、
そんな弾き語りをしてみたい。

酔っ払いと綱渡り芸人byジョアン・ボスコ

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2015.03.23

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その5

サンバのセンセーの初レッスンで、ただ一つ知っているサンバの歌、「トリステーザ」を歌った。

ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う!
ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う!

もー、何が違うって言うのよー!!!
違いがわかるまで通い詰めてやる~!!!

そして、レッスンに通い詰めること数回めにして、
センセーの言わんとすることがおぼろげながら見えてきた。

サンバは2拍子。
つまり、16分音符が8個で1小節。

トリステーザの出だしの「ラヤラーヤ」を、私はこのように歌っていた。

|●●●● ●●●●|●●●● ラーヤー|ラーーー ーーーー|ヤーーー ----|
(●は16分休符。ラ、ヤ、-は16分音符です)


同じ「ラヤラーヤ」をセンセーはこのように歌う。

|●●●● ●●●●|●●●ラ ーヤーラ|ーーー ーーーヤ|ーーーー ----|

私は、8分音符の頭で「ラヤラーヤ」と歌っていたのだが、
センセーは、八分音符の裏で歌う。
しかも、裏と言っても、後ろにずれるのではなく、前に食い込むのだ。

センセーはこう解説してくれた。

「ブラジル人は裏で歌うんだよ。ふつうのブラジル人がふつうに歌うとこうなるの。
 これを頭で平らに歌っちゃうと、サンバにならないでしょ!」

裏、しかも前にずれた裏で歌う。
ベチ・カルヴァーリョのお手本を改めて聞いてみると、確かに出だしの「ラヤラーヤ」は16分音符1個分前に食い込んでいる。
ベッチの歌を何度も聞いていたはずなのに、16分音符1個分のずれというのがあまりにも速くて、センセーの解説を理解するまで、私はその「食い込み」にまったく気がつかなかった。

後にギターも教わるようになると、この16分音符1個分の食い込み現象は、サンバギターの標準的な弾き方でもあるのだと教えられた。
つまり、拍の頭でコードチェンジするのではなく、16分音符1個分前に食い込んだタイミングでコードチェンジする。
それを譜面に書くと、タイを使ったシンコペーションの譜面になるのだけれど、シンコペーションしているというよりも、歌と同じく、16分音符1個分ずつ前に食い込んで進んでいく弾き方ということらしい。

サンバのリズムに体がふわりと浮くのは、それなりの仕掛けがあったんだ!

私は、すっかりサンバのリズムの秘密の虜になってしまった。
来る日も来る日も、16分音符1個分前に食い込む歌い方を練習した。
”トリステーザ"を最後まで歌わせてもらえた後も、センセーのレッスン通いはやめられなかった。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

ギター&ボーカルのトッキーニョと、イパネマの娘など多くのボサノヴァの詩を書いたヴィニシウス・ジ・モライスが二人して歌うトリステーザ。

「16分音符1個分前に食い込む」というのはあくまで基本であって、実際には崩した歌い方をした結果、頭で歌っているということも少なくない。


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2015.03.22

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その4

「歌を習いたいんだけど、1人じゃ怖いから一緒に行って~」

サンバ仲間のダンサーのお姉さんが言う。

いいけど・・・どこに習いに行くの?

「シャカラのボーカルのひと」

えええええ??? あの、凄いサンババンドのボーカル&ギターのおじさま?
行く、行く!!! 連れてって~~~!!!

というわけで、ダンサーのお姉さんと、打楽器隊の2人の女3人で、
サンババンド、シャカラのリーダー、加々美さんの事務所を訪ねた。

「はい、で、誰から?」

え? 誰からって・・・・?
3人一緒に習うんじゃないの?

「人間、一人一人違うんだから、3人一緒にできるわけないでしょ。で、誰から?」

最初は「歌を習いたい」と言い出したダンサーのお姉さん。
サンバダンサー歴の長い彼女は、なかなか見事な歌いっぷり。

そして、次は私の番。

「歌は何を知ってるの?」

知ってるのは"トリステーザ"だけ。片仮名で覚えた歌詞ですけど・・・

「じゃ、歌ってみて」と言って、センセーはギターを弾き出す。

ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う! (と言ってイントロを弾きなおす)
ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う!(と言ってイントロを弾きなおす)
ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う!(と言ってイントロを弾きなおす)

あのー、何が違うんですか?

センセー:だからねー、ラヤラーヤ ラヤラヤーラヤーラ・・・♪だよ。
ももこ:ラヤラーヤ♪
センセー:違う!

私は腹が立った。
レッスンに来ているのである。
しかもこちらは超初心者である。
「違う!」と言うだけじゃ訳がわからないではないか。
何がどう違うのかを説明するのがレッスンというものではないの?

センセー:じゃあね。ゆっくりやるよ。ラ・ヤ・ラーーヤ ラ・ヤ・ラ・ヤーラ・ヤーラ・・・♪」

でも、わからないものは、わからない。

センセー:わからない? ギターよりも先に歌うの。ラ・ヤ・ラーヤ・・・♪ ね?」

ギターよりも先って・・・・?
ちんぷんかんぷんのまま、その日のレッスンは終了。

何よ、何よ!
せっかく歌を習いに行ったのに、
ラヤラーヤしか歌わしてくれないで、
しかも「違う!違う!」って怒鳴られて、
何が違うのかを教えてくれないでなんて、
あんまりじゃないの!

悔しい~~~~~!!!
せめて、"トリステーザ"を最後まで歌えるようになるまで、
レッスンに通い詰めてやる!!!

こうして私のサンバレッスン通いが始まった。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

当時、お手本として聞いていたブラジルの国民的サンバ歌手ベチ・カルヴァーリョの"トリステーザ"。 私の「ラヤラーヤ」の何が「違う!のか、おわかりですか???

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2015.03.20

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その3

サンバ一色の夏。
サンバのことしか頭になかった夏。
そして迎えた8月最後の土曜日。
打楽器隊の一員として参加した浅草サンバカーニヴァルは
38歳にして初めて味わう青春の汗と涙と感動の集大成だった。

そして、祭りは終わり・・・

来年の夏まで何をすればいいんだろう・・・

「サンバのライブに行ってみようよ」とサンバ仲間に誘われた。

ライブ・・・?

「ライブ」という言葉を聞くのも初めてだったが、
とにかくサンバが恋しくて、出かけていった。

会場は市ヶ谷にあったイタリア料理のレストラン。
広い店内の奥に、楽器やらスピーカーやらが並ぶ。
そこがステージということらしい。

料理をあれこれ注文するうちに、ステージの演奏が始まった。

5人編成のバンド。
最初の音を聞いた瞬間に、体が浮いた。
テーブルの美味しい料理が気になるものの、
おちおち座ってはいられない。
自然に体が揺れてしまう。
足が動いてしまう。
立ち上がって踊り出すのに数分とかからなかった。

私と同じように思わず立ち上がって踊りだした人々で
興奮の渦が巻き起こる。

そこに集まった人々は、ブラジル音楽やサンバのコアなファンばかりではなかった。
「楽しいから一緒に行こう」と誘われて来てみたというごく普通の人たちが多かった。
手拍子もダンスもぎこちないが、
皆、それぞれ勝手に体を動かして楽しんでいる。

かっこよく踊れない人も、ブラジルの音楽をよく知らない人も、
このバンドが繰り出すサンバは、みんなの体をふわりと持ち上げてくれる。
何て凄いバンドなんだ!
なんて愉快な夜なんだ!

その凄いバンドの真ん中で、タオルで汗を拭き拭き、ギターをかき鳴らしていたのが、
のちに歌とギターとサンバの手ほどきをしていただくことになるおじさまだったのです。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

”Fantasia Tropical"は、サンババンド、シャカラのリーダーだった加々美淳さんのオリジナル曲。
ここで紹介するのはバンドとは別バージョン。ブラジル人パーカッショニストDamião と二人の演奏だが、この曲は、シャカラ時代によく演奏されていた。


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2015.03.18

見果てぬ夢~サンバに恋した20年 その2

空の下で、思いきり太鼓を叩いて、大きな声で歌う。
この解放感にすっかりハマってしまったにわか仕込のサンバ隊の私たち。

また、やりたいね。
どこかに出番がないかな?
サンバといえば・・・

浅草サンバカーニバル!

サンバの本場だよね!
出よう、出よう、浅草サンバカーニバル!

8月最後の土曜開催の浅草サンバカーニバルを目指して、
区民パレードのサンバ隊を中心に新たにサンバチームを結成。
冬の間、区民センターの音楽室に集まって打楽器の練習に没頭した。
とにかく、叩いていれば愉快だった。

春。

浅草サンバカーニバルに正式にエントリー。
パレードしながら演奏するオリジナル曲を作る。

梅雨明け。

週末の昼間は河原で踊りながら、叩きながらのパレードの練習。
夜は仲間の家に泊まり込んで、衣装制作。
そして、飲んで、食べて、騒いで、寝る。

そして、8月最後の土曜の午後。

スパンコールがキラキラ光る手作り衣装に身を包んだ我がサンバチームは、
チームリーダーが吹くサンバホイッスルと高らかに叩き出すヘピニキを合図に、

ダ、ダ、ダダダ ダダダ ダッ!!!

と30名ほどの打楽器隊が大小の太鼓を思いきり叩きながら歩き出す。
真夏の太陽。
ほとばしる汗。
沿道の観衆の声援。
そして、仲間が叩き続ける太鼓。

生きててよかった!という素直な喜びを込めて
太鼓を叩いて、叩いて、叩きまくる。

38歳のももこに訪れた青春だった。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

10年後。

私は、本場リオ・デ・ジャネイロのサンバカーニヴァル会場にいた。
国立競技場を細長くしたようなサンバスタジアム。
何万人もの観客が詰めかける。

午後9時。
リオの名門サンバチームのパレードが始まる。

それぞれのチームが数千人というスケール。
ダンサー、打楽器隊。そして、チームのテーマソングを演奏するミュージシャン。
そして、大がかりなオブジェ。

それは、パレードする一大スペクタクルショー。
踊りながら、叩きながら、巨大なオブジェを操りながら、
サンバスタジアムをパレードはゆっくりと進んでいく。

ああ、サンバは人生の流れだ。
力強く脈打ちながら流れていく命の川だ。

生きる喜びを教えてくれたサンバ!
このリズムのうねりに、今すぐにでも身を投げ出したい!

ああ、私のサンバ!

サンバのリズムのうねりの中で、私は生きていけるんだ!


涙が止まらなかった。


♪ ♪ ♪ ♪ ♪

リオのメイン会場のサンバパレードはこんな感じ。
名門サンバチームが夜通し迫力のパレードを繰り広げる一大スペクタクルショー。
このほかに、リオの街のいたるところで、庶民のサンバパレードが繰り広げられる。


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見果てぬ夢~サンバに恋して20年 その1

「区民まつりで、サンバパレードのグループを作って出るんだけどさあ。
 一緒にやらない?」

サンバって何よ?

「派手な衣装を着て、太鼓叩いて、練り歩くんだってさ」

区民祭りでサンバパレードをやろう!と集まったのは20人ほど。
サンバが何かを知っている者は誰もいない。
パーカッショニストを招いて、一度だけの講習会を開いて、
打楽器の叩き方の手ほどきをしてもらう。

「思いきり、スコーン!と叩くんです」と言われるまま
初めて手にした太鼓を

スコーン!と叩く。
実に爽快!

そして、サンバの歌を教わった。
配られた歌詞のプリントには、意味不明の片仮名の羅列。

 トリステーザ ポー ファヴォー ヴァイ エンボーラ
 ミーニャ アウマ キ ショーラ
 エスタ ヴェンド メウ フィン・・・

区民祭り当日。
鼓笛隊の小学生や、民謡踊りのおばさま方といったグループに続く我がグループ。
とにかく派手な格好すればいいんでしょ!とばかりに
へんてこりんな衣装をそれぞれあつらえて集合した
サンバ初体験の20名あまり。
大小の太鼓を嬉々として叩きまくっては得意満面で練り歩く。

背後の車に積んだスピーカーからは、
応援にかけつけたベテランサンバ歌手のおじさんが歌う「トリステーザ」が
がんがんと聞こえてくる。

沿道の区民の皆様は、鳴り物入りの仮装行列にビックリ仰天、そして拍手喝采。

へんてこりんな派手派手衣装を身にまとい、
ありったけの愛想をふりまきつつ
ドン、ドン、スコーン!と太鼓を叩きながら練り歩くと
拍手がもらえる。

こりゃ、面白い!

37歳の秋。
こうして、ももこはサンバに取りつかれてしまったのだった。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

片仮名の歌詞カードで覚えた最初のサンバ、「トリステーザ」。

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