福井名物「いなぎさ汁」
1月11日、月曜日、正午。
東尋坊の岩場を命からがら抜け出す。
もしも命を棄てたくなったとしても、私の命は東尋坊では棄てられない。
断崖絶壁の突端に行くまでの岩場の足元が怖くて、
泣きべそかいて引き返すのが関の山だろう、きっと。
そんなことよりお腹が空いた。
あら、何やら美味しそうな立て看板。
せいこ汁って何だろう?
「越前ガニの雌のことだよ。」と旅友。
じゃあ、いなぎさ汁って・・・?
「いなぎさ汁は聞いたこと、ないなあ。何だろう・・・」
旅友と二人、立て看板を見下ろしながら首をかしげる。
「いなぎさじる・・・」すかさずiPadを取り出す旅友。
立て看板の下の端には写真が載っているようだ。
中腰になって、看板に顔を近づけて、よくよく見ると・・・
ねえ、ねえ! いなぎさ汁じゃないよ、これ!
「え? じゃ、何なの?」と旅友。
なぎさ汁だよ! ほら、よく見てごらん!
黄色い立て看板に書かれた赤い文字に顔を近づけて
しげしげと眺める弱視者二人。
我々の弱視の目には「いなぎさ汁」の“い”の字に見えたのは
“い”の字ではなくて、横書きに小さく書かれた“越前”の二文字だった。
二人連れ立って旅をする先々で、
「姉妹ですか?」と聞かれる旅友と私。
背格好の見た目が似ていると言えなくもないけれど、
見え方、見間違い方までこんなに似てるとは!
黄色い立て看板を前に笑い転げる弱視者二人。
いったい何がそんなに可笑しいのか、
まわりの人々にはさっぱりわからなかったこと間違いなし。
「いなぎさ汁」ならぬ、「越前なぎさ汁」という名のカニ汁をいただいて、ほっとひと息。
まだお昼過ぎ。
お次は永平寺へと参りましょうぞ。














