2016.02.16

福井名物「いなぎさ汁」

1月11日、月曜日、正午。

東尋坊の岩場を命からがら抜け出す。
もしも命を棄てたくなったとしても、私の命は東尋坊では棄てられない。
断崖絶壁の突端に行くまでの岩場の足元が怖くて、
泣きべそかいて引き返すのが関の山だろう、きっと。

そんなことよりお腹が空いた。

あら、何やら美味しそうな立て看板。

せいこ汁って何だろう?

「越前ガニの雌のことだよ。」と旅友。

じゃあ、いなぎさ汁って・・・?

「いなぎさ汁は聞いたこと、ないなあ。何だろう・・・」

旅友と二人、立て看板を見下ろしながら首をかしげる。

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「いなぎさじる・・・」すかさずiPadを取り出す旅友。

立て看板の下の端には写真が載っているようだ。
中腰になって、看板に顔を近づけて、よくよく見ると・・・

ねえ、ねえ! いなぎさ汁じゃないよ、これ!

「え? じゃ、何なの?」と旅友。

なぎさ汁だよ! ほら、よく見てごらん!

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黄色い立て看板に書かれた赤い文字に顔を近づけて
しげしげと眺める弱視者二人。

我々の弱視の目には「いなぎさ汁」の“い”の字に見えたのは
“い”の字ではなくて、横書きに小さく書かれた“越前”の二文字だった。

二人連れ立って旅をする先々で、
「姉妹ですか?」と聞かれる旅友と私。
背格好の見た目が似ていると言えなくもないけれど、
見え方、見間違い方までこんなに似てるとは!

黄色い立て看板を前に笑い転げる弱視者二人。
いったい何がそんなに可笑しいのか、
まわりの人々にはさっぱりわからなかったこと間違いなし。

「いなぎさ汁」ならぬ、「越前なぎさ汁」という名のカニ汁をいただいて、ほっとひと息。

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まだお昼過ぎ。
お次は永平寺へと参りましょうぞ。

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かわいそうな東尋坊

1月11日、月曜日。午前11時。

バスを降りると、矢印の方向に10分ほど歩くと、

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荒波洗う断崖絶壁、東尋坊。

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おそるおそる岩場に足を踏み入れる。

怖い、怖い、怖い~~~~

断崖絶壁が、ではない。
足もとの岩場が、弱視の私には恐ろしい。
不規則な岩場におっかなびっくり、一歩、一歩、足を踏み出すのだが、
なかなか先に進めない。

もう、いやだ。
これ以上は、無理。
私はここで引き返すよ・・・あれ? 旅友は・・・?

あれまあ、あんなところまで行っちゃって、iPadなんか見てる。

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「東尋坊ってさあ!」

旅友がiPadで仕入れた豆知識を語り始める。

「お坊さんの名前なんだってさ!」

なるほど。東尋坊というお坊さんが断崖絶壁で修行をしたのか。

「その東尋坊さんが、仲間のお坊さんと女性問題でトラブルを起こしたんだってさ」

じょ、じょ、じょせいもんだい・・・?

「それで、仲間のお坊さん達が東尋坊さんをここに無理やり連れてきて、崖から海に落としたんだって! だからここは“東尋坊”と呼ばれるようになったんだってさ!」

なんと!
東尋坊とは、お坊さん達による集団暴行殺人事件の現場だったのか!

それにしても本日は晴天なる東尋坊。
見上げればうっすらと虹まで見えて。

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我々が訪れたのは、珍しくも小春日和の穏やかな冬の東尋坊。
大岩、小岩の岩場を崖の突端まで進む人々の歓声が飛び交うのどかな観光地。

しかし、波風の荒い冬の東尋坊に地元の人は寄りつかないというのは本当らしい。
付近の海では海難事故が何件も起こっている。
犠牲者を悼む慰霊碑がバス停前に建っていた。

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この断崖絶壁を襲う嵐は、仲間に海に放り込まれた東尋坊の怨念なのかもしれない・・・

・・・・・・・・・・

東尋坊訪問からひと月あまり経った本日。
ウィキペディアをちょいとひも解いてみたら、
坊さん仲間側から描いた東尋坊集団暴行殺人事件が語られていた。
坊さんは坊さんでも、東尋坊達は僧兵集団だった。
荒くれ僧兵集団内部で勃発した集団暴行殺人事件現場が、
何百年か後には北陸有数の観光地になっているとは、
しかもその名が「東尋坊」とは、
彼らには思いもよらぬ展開に違いない。

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2016.01.18

ソフトクリーム・パラダイス~東尋坊

1月11日、月曜日、午前10時半。

東尋坊バス停に到着。
バス停の目の前の土産物屋に入る。

前夜、ホテルで「東尋坊遊覧船」のチラシを見つけた旅友。

「遊覧船、いいよねえ! 東尋坊を上から、下から、眺められるよ!」

ところが、土産物屋のおばさんに聞いてみると、

「今日は波が高いから船は出てないよ」だそうな。

「なるほどねえ! 昨日会った地元の人達が、冬は海が荒れて怖いから近づきたくないって言ってたのは本当なんだ!」と感心する旅友。

船に乗って下から見上げるのは諦めるとして、東尋坊の上から海を見下ろしてみようじゃないか。

で、東尋坊はどっち・・・?

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こりゃ、わかりやすい。
矢印の方向に進むと、やおら観光地っぽい小道に出る。

そこは・・・

右を見ても、ソフトクリームの看板♡
左を見ても、ソフトクリームの看板♡
通り過ぎるお店のあっちにも、こっちにも
ソフトクリームの看板♡

「あれ、生ビールじゃない?」と、旅友が、土産物屋の軒先からぶら下がるオブジェを指さした。

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これが、どーして、生ビールなのよ!
ソフトクリームに決まってるじゃないの!
だって、ここは・・・

ソフトクリーム・パラダイスなんだから~♡

次々現れるソフトクリームの看板。
片っ端から舐めつくしたい衝動をぐっとこらえて選んだのは・・・

烏賊墨ソフトクリーム♪

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ワンポイントの飴玉は、烏賊の目玉の印です~~♪

「そんな山盛りのクリームをよく食べられるよねえ」と呆れ顔の旅友を待たせて、
烏賊墨ソフトクリームを舐める至福のひととき~♡

東尋坊に来てみて、よかったなあ・・・

あ・・・まだ東尋坊の断崖絶壁の手前だったっけ・・・

《つ・づ・く》

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もしも車に乗れたなら・・・

「福井に行くんだけど、一緒にカニ、食べに行かない?」

旅友が電話で誘った。

「福井? 行く、行く!」

最近、すっかり出不精になってしまった私が、「福井」にやおら旅心を掻き立てられたのは、その日に読んだ新聞のコラムを思い出したからかもしれない。

「有名な自生地には福井県の越前海岸など海に近い場所が多い。流れ着いた球根を漁師さんらが植えたのが始まり、との伝承が残っている。」 (日経新聞 春秋 2016年1月6日)

水仙。別名を雪中花と言うそうで、寒さ厳しい季節に白い花を咲かせる。
今がちょうど見ごろらしい。

波荒い冬の日本海を見下ろす越前海岸に広がる水仙畠。

これは見てみたいものだ。

1月10日、日曜の夜。
福井市内での用事を終えた旅友と合流。
駅前のホテルに戻ると、翌日のプランを話し合う。

「東尋坊に行くよね?」と旅友。

東尋坊?
この有名な断崖絶壁が福井にあるとは、その時まであまり認識していなかった。

「東尋坊もいいけど、越前海岸の水仙畠にも行きたいんだけど」と私。

弱視の二人は、それぞれiPadを顔にくっつけて、東尋坊と越前海岸への行き方を調べ始める。

旅友「どちらも福井の海なんだから、両方行けるんじゃない?」
ももこ「東尋坊は・・・えちぜん鉄道で三国まで50分ぐらいで、そこからバスみたい・・・」
旅友「けっこう、遠いんだあ!」
ももこ「越前海岸もけっこう遠いなあ。福井駅からバスで70分だって。」

iPadに顔をくっつけたまま会話は続く・・・

ももこ「東尋坊から越前海岸まで歩いていけないかなあ?」
旅友「無理だよ。googleの地図を見たけど、40キロぐらい離れてるよ」

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二つの観光地を結ぶ公共交通機関はない。
両方に行こうとすれば、いったん福井駅に戻って、バスや電車を乗り換えて、再び海岸に向かうしかない。

こんな時、車に乗れたら自由なのに!

東尋坊の断崖絶壁を目の当たりにしたら、冬の日本海を眺めながら国道306号を1時間ほどドライブ。
越前海岸で車を降りて、水仙の花畠までお散歩して、お昼は海岸沿いのレストランで海の幸・・・

もしも車に乗れたなら、そんな半日観光コースをたどれるのに・・・

こんな時、時刻表に縛られないドライブがうらやましい。
そこに道路さえあれば、自由気ままに旅できる車の人はいいなあと思うのだった。

弱視の我々には「ドライブ」という選択肢もなければ、
エコノミークラスゆえ、「タクシー」という選択肢もない。

東尋坊と越前海岸。
どちらかひとつを選ばねばならない。

旅友「越前海岸に行こうよ。」
ももこ「東尋坊に行かなくていいの?」
旅友「また来ればいいじゃん! 水仙の花は今の時期しか見られないんだからさ!」

旅友のこの割り切り方が頼もしい。
心置きなく一緒に旅ができる友ではある。

というわけで、福井駅からバスで70分の越前水仙の里公園へ行くことにしたのだった・・・

≪つづく・・・≫

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2016.01.15

福井ひとふで書き、おさわがせの旅 その1

「福井でカニ食べようよ」

旅友のさそいに、久々に旅心を刺激された。

福井。東尋坊。日本海。

そうだ。
各駅停車に乗って、冬の日本海を眺めながら
福井まで一人旅がいい。
そして福井で旅友と合流してカニの晩餐。
そうしよう。

JRみどりの窓口に乗車券を買いに行った。
信越本線経由で、日本海側を各駅停車に乗って福井へ。
帰りは福井から米原経由で東海道新幹線。

ひとふで書きの乗車券を握りしめての一人旅。
さらにふくらむ旅ごころ。

ところが、みどりの窓口に行ってみると、
ひとふで書き乗車券は手に入らないことがわかった。
直江津から金沢までの区間は、以前はJRの路線だったのだが、
北陸新幹線開通を機に民営化されていて、
その区間の乗車券はみどりの窓口では買えないのだという。

仕方がないので、
東京から直江津までの乗車券と、
金沢から福井、米原経由東京までの
2枚の乗車券を購入。

1月9日、土曜日。
夕方で仕事を終えると大宮へ。
19時58分大宮発の上越新幹線に乗り込む。
今宵は長岡泊まり。
窓側の自由席に落ち着くと、夕食用の人参を一本ほおばる。

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21時12分、長岡着。
新幹線の特急券と、直江津までの乗車券の2枚を重ねて
自動改札口のスロットに差し込で、
一枚だけ出てきた乗車券を抜き取る・・・はずだったのだが・・・

バタン!

改札口が閉まって、駅員さんが飛んできた。

ももこ「直江津までの乗車券を持っているんですが?」
駅員「今日はどちらまで行かれますか?」
ももこ「ここ、長岡で途中下車したいのですが?」
駅員「長岡で途中下車されますか? その場合は280円の追加の運賃をお支払いいただくことになるんですが。」
ももこ「直江津までの乗車券を持っているのに、ですか?」

ここで、窓口の駅員さんは、大きなパネルを取り出して
そのパネルを指し示しながら解説を始める。
まるでテレビ番組の「フリップ」を示しながら解説するコメンテイターのようだ。

駅員「お客様がお持ちの乗車券は、東京から、長岡の一つ西隣りの宮内駅を経由して直江津までの乗車券でして。」
ももこ「はあ・・・」
駅員「その乗車券では、長岡は通らないことになっております。」
ももこ「はあ・・・」
駅員「ですから、宮内―長岡間の往復運賃、280円はいただいていないことになるわけでして。」
ももこ「うーん・・・」
駅員「もし、長岡で途中下車されずに、このまま宮内経由で直江津方面に行かれるのでしたら、追加料金は必要ないのですが、長岡で途中下車される場合は、宮内―長岡間の運賃をいただくことになるわけです」

解説用の特大路線図ボードに顔を近づけてよくよく見る。
なるほど。
新幹線で長岡まで来てしまった私は、
本来の東京―直江津のルートから、東に外れてしまったらしい。
正規ルートには含まれない、宮内駅の東隣りの長岡駅に来てしまったわけだ。

キツネにつままれたような気分ではあったが、
駅員さんの解説は筋が通っていると感じたので、
280円を支払うと、宮内―長岡間の2枚の切符を渡された。

駅員「宮内から長岡への切符は、今、頂戴いたします。」
ももこ「はい・・・」
駅員「長岡から宮内への切符は、明日ご乗車の際におだしください」

というわけで、福井軽油のひとふで書き切符に抱いた旅のロマンは、
直江津―金沢区間民営化で一筆書きに空白区間ができ、
宮内―長岡間の乗車券を追加購入というトリックにひっかかり、
首をかしげながら、長岡駅近くのホテルに向かったのだった。

≪つづく≫

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