歩いて、昇って、三万歩余り~東京タワー再開記念ウォーキング
東京タワーが、
4月8日からずっと閉鎖されていた
東京タワーが、
今日からオープンだって!
行かなくちゃ!
いつもは土曜日曜しか昇れない
展望台へ続く600段の真っ赤な外階段が
当分の間
毎日昇れるんだって!
行かなくちゃ!
東京タワーは
歩いて行って
歩いて昇って
歩いて帰ってくるところ。
行かなくちゃ!
お気に入りの真っ赤なスニーカーに、
ハダカデバネズミがちょこんとくっついた
真っ赤なリュックを背負って、

行かなくちゃ!
東京タワーに行かなくちゃ!
東京タワー再開初日。
2020年5月28日、午前11時。
東京タワー目指して
ウォーキング、スタート!
護国寺前から音羽通りを江戸川橋、
神田川を渡ってさらにまっすぐ、
早稲田通りを左に曲がって
神楽坂駅手前で右に曲がって
外堀通りに出れば
目の前が市ヶ谷駅。
外濠公園のベンチにて、
持参のゆかりご飯おにぎりを頬張ったら、
日テレ通りをだらだらのぼる。
テイクアウトの袋を提げた
サラリーマンやOLさんが行き交う
お昼時のプリンス通り。
中華にカレー、定食屋の前には
間合いを取って並ぶ人々。
オフィス街の昼休み風景に
安堵と懐かしさを覚えつつ
人混みをすり抜けて青山通りへ。
大通りの喧騒を避けて
参議院議長公邸横の細い下り坂をてくてく。
料亭風の店構えを何軒かやり過ごすと、
左手に見えるは
手入れの行き届いた植え込みの小路。
衆議院第一議員会館と
首相官邸の間の静かな坂道。
初夏の日差し、緑のそよ風。
あまりの心地よさに
いつしかマスクを外してそぞろ歩くと・・・
「どちらへ行かれますか?」
と、呼び止められる。
問いの主は、おまわりさん。
「東京タワーに行くんです」
マスクを外してる後ろめたさに
消え入りそうな声で答える。
「もしかして、道に迷ってます?」
なおも怪訝な顔のおまわりさん。
「いえ、道順は熟知してます(何十回も通ってますもん)
この坂を上ったら、
大通りを右に進んで、
日本財団、虎ノ門病院を通って
神谷町駅の先を・・・」
おまわりさん相手に
東京タワーへの道順を
得々と解説する変なおばさん。
「わかりました。ありがとうございます」
と言いおいて
小路を下っていくおまわりさん。
もしかして、今のは職務質問だったかしらん?
さらに小路を上っていくと
今度は3人のおまわりさんが近づいてくる。
またもや職務質問か?と思いきや
「こんにちは~」と
3人のおまわりさんに
声かけられる。
拍子抜けするやら
ほんわかするやら
風薫る5月の永田町の抜け道のひとこま。
おまわりさんにご説明した通りに、
六本木通りを超えて
桜田通に入ると間もなく、
見えてきました、東京タワー!
青空に映える真っ赤な上半身に
我が頬はにっこり緩む。
歩けば歩くほど
近づく、近づく、東京タワー。
その名も「東京タワー通り」を左に曲がれば
近づく、迫る、現れる、
東京タワーの清々しき雄姿!
再開初日とはいえ
本日は平日のためか。
それとも、
「展望台へは600階段をお昇り願います」と
ニュースでアナウンスされたせいか。
いや、いや、それよりも何よりも、
外国人観光客の姿が皆無だからだろう。
閑散とした入り口付近で
スタンバイするテレビクルーも手持ち無沙汰気味。
チケットを買い求めると
ロビーの裏手の検温スポットを無事通過。
展望台への600階段の前の足慣らし、
タワーのふもとの商業施設、「フットタウン」の屋上まで
129段の階段を昇れば
真っ赤な鉄骨の真下へ出る。
ベンチに座って、
持参の黒豆茶で喉を潤しつつ、
力強く立つ真っ赤な四肢を
至近距離から見上げては
感激の深呼吸。
いざ、上らん、
真っ赤な階段、600段。
一段、一段、
踏みしめつつ、
味わいつつ。
真っ赤な金網越しの風に吹かれて
一段、また一段・・・
ソーシャル・ディスタンスを気遣うまでもないほどに
階段を上り下りする人はまばら。
「いい運動になるなあ!」と独り言ちながら
元気に駆け上がる小学生男子の
後ろ姿の頼もしさよ。
半分ほど上ったところで
東京タワーとおそろいの
真っ赤なリンゴで一休み。
そしてまた、
一段、一段・・・
展望台まで昇りきると
「おつかれさまでした~」と
お出迎えのお姉さんから
「昇り階段認定証」を受け取る。
実はすでに何十枚もいただいている「認定証」だが、
コロナ禍の終息を祈りつつ
昇った本日の認定証は、
お守りとして大事にしよう。
ソーシャル・ディスタンスを示す床の足マークも不要なほど
人影少ない展望台。
あれがレインボー・ブリッジかしらと
iPad越しに眺めてみたり、
「何度乗っかっても
全然怖くないわん」と
真下が透けて見えるガラス板に乗ってみたり。
空いている今日だからこそ
ゆったり楽しめる展望台。
ところで、下りも階段ですか?
真っ赤な外階段は、
上りはヘイチャラだけど、
弱視の私には
おっかなびっくりの下り階段。
並ぶ人のひとりもいないエレベーター前。
「乗れますか?」
「はい、どうぞ」
いつもは満員御礼の下りエレベーターも
本日は貸し切りなり。
同乗のエレベーターガールさんの
生アナウンスも一人占め。
フットタウン3階で降りたら
目の前のマザー牧場カフェへまっしぐら・・・
あれ・・・ない・・・?
きょろきょろすると
奥の仮スペースで
ひっそり、こっそり営業中。
あまりのお客の少なさに
店員さんのテンションも低めだが
600階段昇った後の
マザー牧場カフェのソフトクリームに
舌も心もとろり、とろける。
さて、帰り道はどこを行く?
私の歩き旅は、来た道は戻らない、
一筆書きの旅。
ソフトクリームの包み紙を
ズボンのポケットにねじ込むと、
東京タワーを何度も振り返りながら
坂道を下って日比谷通りへ。
まだ一度も入ったことのない
日比谷公会堂の前を通って、
日比谷公園沿いをしばらく進めば
皇居外苑のお堀端。
去年だったか、一昨年だったか、
愛用のキティーちゃんポットを落として
大騒ぎした和田倉橋から、内堀通りに入る。
静かなお堀を左手に、
ごくたまにジョギング人とすれ違いつつ、
毎日新聞本社を右手に見上げたら竹橋駅。
皇居前という
改まった雰囲気の内堀通りから、
日常の都会の水辺の内堀通りをもうしばらく。
九段下交差点を渡れば、
そこから始まる目白通りを
飯田橋駅までまっしぐら。
飯田橋駅前の、巨大かつ複雑怪奇な交差点。
我が行く先を見極めつつ、
横断歩道を渡って大久保通へ。
時計を見れば5時近い。
さすがに少々くたびれた、
と思ったところに現れた
ドトールに吸い込まれて、
チーズケーキとコーヒーで一服しているうちに、
店内にまで聞こえるほどの雨音。
真っ赤なリュックから取り出した
開き切らない折り畳み傘をさして、
猛烈な夕立の中、
築土八万町信号を渡って
細い道を北上。
まっすぐ行けば
神田川沿いの目白通りだが、
一つ手前の角を左に入り、
40年前アルバイトした
トーハン本社ビルを右手に見上げつつ、
そのまま進んで江戸川橋商店街へ。
一筆書きの起点、江戸川橋駅にたどり着くころには
土砂降りの雨も小雨におさまる。
おんぼろ傘の骨はくにゃりと曲がり、
真っ赤なスニーカーの足元はぐしょ濡れだが、
護国寺前の交差点で見上げれば
うっすら薄日さす夕暮れの空。
日常と非日常が交差する
コロナ渦中の東京を、
東京タワーの真っ赤な階段600段を目指して歩いた、
32337歩の一筆書きウォーキングの旅も、
そろそろ終着点の我が家。
今夜は久しぶりに
熱いお風呂に入るのも
いいかもしれないな。

















